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2021年11月12日 (金)

『下着博覧会』

☆☆1/2 二葉エマの怪演。近藤監督の色。
Haru

 私はディズニーからアダルトまで素晴らしい作品には垣根はないと考えていて、その表現でないと描けないドラマがあると思います。ピンク映画やにっかつロマンポルノ、さらにはAVと呼ばれる作品にも素晴らしい作品はたくさんあります。OP PICTURES+フェスでも城定秀夫監督の『恋の豚』や、髙原秀和監督の『人妻の教え子 ふしだらな裏切り』あたりはすごく好きでした。
 さて本作は2編の中編で構成されたオムニバス。1本目「愛は無限大」はコメディタッチの物語なのですが、正直あまり笑えませんでした。いくらなんでも詰め込みすぎで、行き当たりばったり感が強い。胸のトラウマや店長のガジェットもいかされてません。もし艶笑コメディでいくのであれば店長を主役にすべきだったし、ナンセンスコメディにするのであれば、マネキンが主役でもオモシロかったかもしれません。ブラジャーに襲われるシーンは『死霊のはらわた』のブルース・キャンベルっぽくて、そこは楽しかったです。
 2本目「春っぽい感じで」はおもしろかったですね。これはピンクならではのドラマでした。函波窓演じる美容師は自分のことを「カリスマ」と呼ばせちゃってるような男で、彼女もいるけど明らかに倦怠期。そこに二葉エマ演じる新人美容師と刺激的な関係を持ってしまいます。この二葉エマが大怪演で、函波窓がなぜのめり込んでしまったのかに説得力をもたせることに成功しています。2人のやりとりは爆笑物で、まさか題名がこういう使われ方になるとは!という驚きのシーンと、ローターを使われた函波窓のリアクションは本当に秀逸でした。近藤啓介監督については私の不勉強で長編はみていないのですが、テレビ東京でオンエアされた「直ちゃんは小学三年生」というドラマをみていました。これでもシチュエーションの作り方と、斜め上を行くセリフの出し方がおもしろくて、そのあたりのセンスが近藤監督の色なんだなと思いました。
 ただその分、割を食ってしまった印象になったのが新村あかり演じる美容師の彼女の存在。ここは新人美容師と対にならなきゃいけなかった。新人美容師はただ単に刺激がほしいだけで美容師のことは自分も気持ちよくなって楽しむための遊び道具程度にしか考えていない。一方、美容師の彼女は多分不器用でルックスや家事とかにこれといった長所とかはない女性かもしれないけれど、実は美容師のことを心から愛している。しかし美容師側はそのことのありがたみを忘れかけている。それを象徴するのが彼女の口からアレが出てくるシーンで、あれは彼女が美容師のために健気に精一杯貞操を守ろうとした証でもあるのですが、それを美容師は気づいてあげられないどころか、気持ち悪いと感じてしまうすれ違い。ここのシーンが軽く感じました。おそらく尺の関係やR-15版にするための編集によるものもあるかもしれませんが、新人美容師とのやりとりをワンシークエンス削って彼女側の芝居どころをつくったら、すれ違いのシーンに加えて、侍のシーンや最後のパンティのシークエンスもより効果的になってきたと思います。
 函波窓という俳優さんはユニークな魅力がありますね。ルックスも個性的ですし、こういうダメ男役をユーモアをスパイスにして嫌みなく演じられる。また二葉エマは要注目。今度はコメディエンヌもできそうですし、感情を抑えるような役柄もみてみたいです。
 昔から映画ではホラー(スリラー)とエロは新しい才能のショーケースとなってきました。万人に勧められるタイプではないかもしれませんが、近藤監督や若い俳優さんのような今後の活動に注目していきたい映画人の才能を楽しめる作品として、一見の価値があると思います。
(テアトル新宿にて)

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