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2016年5月14日 (土)

『君が生きた証』

Rudder ☆☆☆1/2 「頼むからみて!」と伝えたくなる作品。 
 とにかく『ゲーム・オブ・スローンズ』第6章が大興奮モノなので、それだけでブログが埋まりそうなのですが、先月今月と映画の方も秀作にたくさん当たっていて嬉しいかぎり。劇場ですとやはり『スポットライト』が一番の見応えある作品でしたが、ホームシアター鑑賞作品ではこの作品が一番でした。ウィリアム・メイシーの初監督作品である本作は、本当に心揺さぶられる見事な作品でした。
 この作品の魅力は3つあります。まずドラマとして優れていること。ビリー・クラダップ演じる父親が銃乱射事件で息子が命を失ったことから喪失した自分の人生を、息子が遺した歌とアントン・イェルチン演じる1人の青年との交流で取り戻していく物語を丁寧に紡ぎます。また音楽映画として優れていることもあげられます。青年とのジャムセッション、その爽快感。バンド演奏の魅力である客やメンバーなど、誰かとつながる楽しさが描かれています。この2つがドラマを構成する縦糸と横糸です。そしてそれをひきたてるのが3つめの魅力、構成の妙です。予告編をみた方、私や他の人のレビューや解説を読まれている方、これ以上は事前の情報はない方がいいです。実は多くの観客を驚かせるであろう展開上の「!」があります。これをメイシーは初監督ながら余白のある描き方をすることで、実に味のある作品に仕上げました。最後に父親が歌うシーン、ここだけでもその演出力の確かさがわかろうかというもの、その語り口(挿入される場面の巧さ!)、曲のアレンジ(いや、これは狙ってますよ、ちゃんと)、そしてその見事な幕切れにグッとくるものを抑えられませんでした。
 本当にみてよかった。でもそれだけでなく誰かにこの素晴らしさを伝えられたら本当に嬉しい!(埋もれるにはもったいないこの輝きをもった作品の素晴らしさを伝えられる言葉がない自分が恨めしいのですが)みた人の心にそんな気持ちが残るであろう秀作です。

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