『レヴェナント 蘇えりし者』
☆☆☆ 技術的な力業がやや鼻につく
力作であることは間違いないです。ただしこれが傑作かとなると、個人的にはかなり微妙かもしれません。
いや、それでもまず認めましょう。ディカプリオは大熱演です。これでオスカーもらえなかったら・・・という町山さんの話に納得。文字通りの熱演です。そしてルベツキの撮影も凄まじい。もうマイッタというぐらい、どうやって撮影したの&なんて美しいののオンパレード。ただこれが作品の力や魅力になるのかというと必ずしもそうではない気がするのです。
まず内容的に独創性をあまり感じなかったこと。物語は復讐譚ですし、自然光撮影だってパイオニアとは言えない部分があって、描かれた世界に既視感もありました。まるでリアルなホドロフスキー『エル・トポ』? 真の『ダイ・ハード』?(汗) いえいえ、一番近く感じた作品は、やはりテレンス・マリックの『ニュー・ワールド』でしょうか。なにしろ撮影がルベツキ、プロダクションデザインがジャック・フィスクと、視覚的な要素を担当しているキーパーソンが同一人物なのですから。けれども本作はその技術が物語と噛み合っていません。確かに技術的には凄かった。物語も興味深い。ではなぜ本作はこれほどまでに「ヨリ」の映像ばかり? そしてローアングル? 前作『バードマン』はあの世界を描くにはあれしか方法がなかった気がするぐらい物語を支える技術に説得力があった。では本作は? きっちりと3つの物語を絡め合わせた点が魅力的だった『アモーレス・ペレス』『21グラム』などのイニャリトゥの初期作品と比較して、あまりにも強引すぎて白けさせた『バベル』のように、本作は技術的な力業がやや鼻につく作品でした。それゆえにディカプリオが本来背負っている業のようなものがにじみでてこないところに、宗教的なバックグラウンドの重みがなくなってしまっています。
力作であり見応えはあります。でも。私は人にはすすめないかもしれません。何かの愉しみや感動を求めているのであれば、かなりの勇気が必要な独特の味わいの作品です。そう、まるで劇中に出てくるバッファローの生肉のように。
(109シネマズ二子玉川 シアター7にて)
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コメント
山に登るために見ました←山は挫折(^^;
おっしゃるとおり、どこか一歩引いた感じといいますか、復讐に共感することを妨害する何か? が突き刺さった感じを受けました。
グリズリーのシーンは凄いなーと子供な感想でごめんなさい!
投稿: 風林火山 | 2016年6月15日 (水) 20:01
風林火山さん、コメントありがとうございます。私はどうもそのひいた視点にどこか物足りなさを感じてしまいました。とりあえずクマと出会っても死んだふりはダメだと思いました(もっと子どもな感想です)。
投稿: じんけし | 2016年6月15日 (水) 22:22