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2016年4月16日 (土)

村上浩康監督『無名碑 MONUMENT』のこと

 今日は1人の映画監督さんと、その監督の新作を紹介したいと思います。

 村上浩康監督とは第1回WOWOW映画王選手権で知り合いました。お互いに出場者同士で映画のチラシのこととか(今はなき水野書店を教えてもらったのも村上さんにでした)、オンエア中の『ゴッドファーザー』とかで休憩中に盛り上がっていました。
 そんな村上さんから「自分の作品が上映されます」という話を教えていただいたのは、2012年のこと。村上さんは映画監督という肩書きもお持ちだったことに驚きました。作品の題名は『流(ながれ)』、神奈川県の中津川の生態と、生き物の保護と研究に取り組んだ男性2人の姿を、平成13年から10年間にわたり追い続けたドキュメンタリー映画です。この作品は第53回科学技術映像祭文部科学大臣賞を受賞し、第65回映像技術賞・文部科学省特選、そして2012年度キネマ旬報文化映画ベストテン第4位にも選出されています。ポレポレ中野での劇場公開で私も鑑賞をしたのですが、とても興味深い作品でした。それは『流』が優れた<記録映画>だったからです。
 『流』がおもしろいのは、ホビーがカルチャーになる過程を描いているからです。中津川の生態を保護している男性は、ただ単にそれが好きで興味があるからはじめたのだと思います。そこにはフィクションにありがちな何かに突き動かされた使命感は感じられません。ところがそれを続けていくうちに、自分も周囲もどんどん変化していきます。「好き(ホビー)」が、たくさんの人々と「一緒に共有する(カルチャー)」になったのです。
 私は昨今のドキュメンタリーの風潮が好きになれません。何となくパターンが決まっていて、強烈な個性が素材として重宝がられ、その醜悪さをさらけ出し、フィクションとノンフィクションの境目をうろうろするような作風がもてはやされている気がします。だが本来ドキュメンタリーは作り手が人々に伝えるべきだと感じるものを撮るべきではないでしょうか。つまり派手さはなくても映像作家がその一側面を切り取り、その見方を観客に提示するだけでも、その切り取り方と見方が優れていれば作品はおもしろいものになると思うのです。だから『流』は優れた<記録映画>だし、優れた<記録映画>と呼ばれている作品はドキュメンタリーの作品群の中でもっと評価されるべきだと思います。
 そんな村上さんがTwitterで「盛岡たかまつ手づくり映画祭」で上映するために撮影している話をされていました。その作品がこの新作『無名碑』です。

 この映画は岩手県盛岡市にある「高松の池」を舞台にした映画祭で上映するために製作されたドキュメンタリー映画です。
 市民の憩いの場で桜の名所でもある「高松の池」を舞台に、ここを訪れる様々な人々にインタビューをしながら、池にまつわる歴史や生き物たちの姿、さらに戦争の記憶や環境問題などを描きます。(公式サイトより)

 ねっ? ちょっと興味が湧きませんか? 
 あっ、一応但し書きをしておきますが、大ヒットするタイプの作品ではないです(汗)。きっとここには派手な映像エフェクトとか、盛り上がる劇伴とか、激しい台詞の応酬とかはないはずです。ひょっとすると疲れている時は眠くなるよう可能性もあるかもしれません(大汗)。でもでも。『流』を作った監督らしい切り口と視点をまたみられるかと思うので、私は楽しみにしているのです。素直に「へぇ」という気持ちと共に、自分の心を豊かにしてもらったと鑑賞後に思える作品となっているのではないでしょうか。
 なにより。何でもそうなんですが、特にこういう予算的に小さな作品は表現ににじみでるのは「人柄」なのです。こういうことに興味をもつ監督さんですから、それは多分観客の皆さんも感じられるでしょう(笑)

 今日から地元盛岡で上映開始です。お近くの方はぜひ足を運んでみてください。

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