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2016年4月26日 (火)

『レヴェナント 蘇えりし者』

Revenant ☆☆☆ 技術的な力業がやや鼻につく
 力作であることは間違いないです。ただしこれが傑作かとなると、個人的にはかなり微妙かもしれません。
 いや、それでもまず認めましょう。ディカプリオは大熱演です。これでオスカーもらえなかったら・・・という町山さんの話に納得。文字通りの熱演です。そしてルベツキの撮影も凄まじい。もうマイッタというぐらい、どうやって撮影したの&なんて美しいののオンパレード。ただこれが作品の力や魅力になるのかというと必ずしもそうではない気がするのです。
 まず内容的に独創性をあまり感じなかったこと。物語は復讐譚ですし、自然光撮影だってパイオニアとは言えない部分があって、描かれた世界に既視感もありました。まるでリアルなホドロフスキー『エル・トポ』? 真の『ダイ・ハード』?(汗) いえいえ、一番近く感じた作品は、やはりテレンス・マリックの『ニュー・ワールド』でしょうか。なにしろ撮影がルベツキ、プロダクションデザインがジャック・フィスクと、視覚的な要素を担当しているキーパーソンが同一人物なのですから。けれども本作はその技術が物語と噛み合っていません。確かに技術的には凄かった。物語も興味深い。ではなぜ本作はこれほどまでに「ヨリ」の映像ばかり? そしてローアングル? 前作『バードマン』はあの世界を描くにはあれしか方法がなかった気がするぐらい物語を支える技術に説得力があった。では本作は? きっちりと3つの物語を絡め合わせた点が魅力的だった『アモーレス・ペレス』『21グラム』などのイニャリトゥの初期作品と比較して、あまりにも強引すぎて白けさせた『バベル』のように、本作は技術的な力業がやや鼻につく作品でした。それゆえにディカプリオが本来背負っている業のようなものがにじみでてこないところに、宗教的なバックグラウンドの重みがなくなってしまっています。
 力作であり見応えはあります。でも。私は人にはすすめないかもしれません。何かの愉しみや感動を求めているのであれば、かなりの勇気が必要な独特の味わいの作品です。そう、まるで劇中に出てくるバッファローの生肉のように。
(109シネマズ二子玉川 シアター7にて)

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2016年4月21日 (木)

いよいよ『ゲーム・オブ・スローンズ第6章「冬の狂風」』

 いよいよ4月25日に『ゲーム・オブ・スローンズ』の最新シーズンである第6章「冬の狂風」がスターチャンネルでオンエアされます。しかも日本ではいつも半年から3ヶ月遅れぐらいでオンエアだったのですが、今回は何と日米同時放送。これ、ウソ偽りなしで、米国本国のHBOでは東部標準時間で24日(日)の夜9時より。これに時差を考えると日本では25日(月)朝10時というわけです。誰がこの時間、スターチャンネルみるんだよというツッコミはなしです(笑)。『フォースの覚醒』でも大騒ぎでしたが、いや、それと同等か、それ以上に画期的な試みだといえるのではないでしょうか? 
 私は最初は、ああ最近はやりのファンタジーものの亜流かと馬鹿にしていたのですが、ときどき偶然みちゃう時があって、その時には何か引き込まれてしまう。解くにシーズン2あたりはとても激しく、シーズン3のあたりから毎回みるようになった次第です。とにかく物語展開が激しく、美術とかもすごくて、キャラがみんな立ちまくり。最近はもう風呂敷ひろげまくりで、それぞれの物語が少しずつ進むのがじれったいぐらい。でもオススメであることは間違いないです。
 しかし。まだみていない方は最初からみなきゃだめ?というあたりが気になっているでしょう。大丈夫です。途中からでもまったく問題はありません。いや、問題はあるのだけれど(汗)、少々設定がわからなくても補って余りある魅力があって、充分追いつけることができるのです。すでに第6章のトレーラーをみていると、わくわくが止まりません。本当に楽しみです。

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2016年4月20日 (水)

2015年格闘技映画の傑作2本が特別上映!

 今日は我が家では『クリード』のBDリリース日ということで先ほどからシアターで上映しております。やはり盛り上がりますなあ!
 実は2015年は格闘技を題材にした映画、しかも格闘技映画史に残るような力作3本がそろって公開された記念すべき年になりました。(ただし『ウォーリアー』は特別な上映形態でしたが)
GekisenWarrio_2Creed







『激戦 ハート・オブ・ファイト』(総合格闘技)
『ウォーリアー』(総合格闘技)
『クリード』(ボクシング)

 この3本はファイトシーンも素晴らしいのですが、やはりその見応えあるドラマが魅力です。落ちぶれた元御曹司、八百長で道を踏み外した元チャンプ、暗い過去を引きずる母とひとり娘。偶然が引き合わせたこの4人の物語には号泣必至の『激戦 ハート・オブ・ファイト』。崩壊してしまった家族の運命に翻弄された父と兄弟。やがて対照的な人生を歩んだ兄弟が総合格闘技の大会で運命の再会をはたす『ウォーリアー』。そして自分のライバルであり友人だった男の隠し子である青年に乞われ、自らはトレーナーとなって二人三脚でボクシングの頂点を目指す人気シリーズのスピンオフの物語『クリード』。どれも共通するのは登場人物が絆を深めることで人生を取り戻そうともがき苦しむ姿を格闘技というストイックなスポーツを通して鮮烈に描いていることです。どれも一見の価値ある力作ばかりなのですが、願わくばぜひ初見は映画館で、といきたいところです。ところがこれで3本ともソフト化されてしまいましたので、なかなか難しいところなのですが、

やりました! なんと『激戦 ハート・オブ・ファイト』『クリード』奇跡の2本立て、キネカ大森で1週間の限定上映です。『クリード』は後から評判を聞いて悔しかった方もいらっしゃるでしょうし、『激戦』は存在自体を知らない方も少なからずいらっしゃるでしょう。しかも初日には松崎ブラザーズさんたちのトークショーまであります。未見の方はぜひぜひ足を運んでください。

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2016年4月16日 (土)

村上浩康監督『無名碑 MONUMENT』のこと

 今日は1人の映画監督さんと、その監督の新作を紹介したいと思います。

 村上浩康監督とは第1回WOWOW映画王選手権で知り合いました。お互いに出場者同士で映画のチラシのこととか(今はなき水野書店を教えてもらったのも村上さんにでした)、オンエア中の『ゴッドファーザー』とかで休憩中に盛り上がっていました。
 そんな村上さんから「自分の作品が上映されます」という話を教えていただいたのは、2012年のこと。村上さんは映画監督という肩書きもお持ちだったことに驚きました。作品の題名は『流(ながれ)』、神奈川県の中津川の生態と、生き物の保護と研究に取り組んだ男性2人の姿を、平成13年から10年間にわたり追い続けたドキュメンタリー映画です。この作品は第53回科学技術映像祭文部科学大臣賞を受賞し、第65回映像技術賞・文部科学省特選、そして2012年度キネマ旬報文化映画ベストテン第4位にも選出されています。ポレポレ中野での劇場公開で私も鑑賞をしたのですが、とても興味深い作品でした。それは『流』が優れた<記録映画>だったからです。
 『流』がおもしろいのは、ホビーがカルチャーになる過程を描いているからです。中津川の生態を保護している男性は、ただ単にそれが好きで興味があるからはじめたのだと思います。そこにはフィクションにありがちな何かに突き動かされた使命感は感じられません。ところがそれを続けていくうちに、自分も周囲もどんどん変化していきます。「好き(ホビー)」が、たくさんの人々と「一緒に共有する(カルチャー)」になったのです。
 私は昨今のドキュメンタリーの風潮が好きになれません。何となくパターンが決まっていて、強烈な個性が素材として重宝がられ、その醜悪さをさらけ出し、フィクションとノンフィクションの境目をうろうろするような作風がもてはやされている気がします。だが本来ドキュメンタリーは作り手が人々に伝えるべきだと感じるものを撮るべきではないでしょうか。つまり派手さはなくても映像作家がその一側面を切り取り、その見方を観客に提示するだけでも、その切り取り方と見方が優れていれば作品はおもしろいものになると思うのです。だから『流』は優れた<記録映画>だし、優れた<記録映画>と呼ばれている作品はドキュメンタリーの作品群の中でもっと評価されるべきだと思います。
 そんな村上さんがTwitterで「盛岡たかまつ手づくり映画祭」で上映するために撮影している話をされていました。その作品がこの新作『無名碑』です。

 この映画は岩手県盛岡市にある「高松の池」を舞台にした映画祭で上映するために製作されたドキュメンタリー映画です。
 市民の憩いの場で桜の名所でもある「高松の池」を舞台に、ここを訪れる様々な人々にインタビューをしながら、池にまつわる歴史や生き物たちの姿、さらに戦争の記憶や環境問題などを描きます。(公式サイトより)

 ねっ? ちょっと興味が湧きませんか? 
 あっ、一応但し書きをしておきますが、大ヒットするタイプの作品ではないです(汗)。きっとここには派手な映像エフェクトとか、盛り上がる劇伴とか、激しい台詞の応酬とかはないはずです。ひょっとすると疲れている時は眠くなるよう可能性もあるかもしれません(大汗)。でもでも。『流』を作った監督らしい切り口と視点をまたみられるかと思うので、私は楽しみにしているのです。素直に「へぇ」という気持ちと共に、自分の心を豊かにしてもらったと鑑賞後に思える作品となっているのではないでしょうか。
 なにより。何でもそうなんですが、特にこういう予算的に小さな作品は表現ににじみでるのは「人柄」なのです。こういうことに興味をもつ監督さんですから、それは多分観客の皆さんも感じられるでしょう(笑)

 今日から地元盛岡で上映開始です。お近くの方はぜひ足を運んでみてください。

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2016年4月13日 (水)

『レッド・アフガン』イマジカBSでHDオンエア!

Img_1355 イマジカBSが今月、『レッド・アフガン』という作品をオンエアします。 (写真は米盤DVD) ソ連のアフガン侵攻を背景に、とある村を襲撃した戦車と、それを追うアフガン・ゲリラ。狂信的な隊長によって殺されかけた兵士がゲリラに助けられ、逆にその戦車を追い詰めるという物語。1988年にケビン・レイノルズが監督したこの作品は埋もれた傑作で、まさかまさかのハイビジョンオンエア。まだあと今月2回オンエアがあるのですが、たくさんの人にみていただきたくて、少しでも素晴らしさを伝えられたらと思い、ここで紹介をしたいと思います。

<実はみんなの評価がイイ>
みんなのシネマレビュー 7.29 / 10
Yahoo!映画 4.17 / 5
amazon(DVDのレビュー) 4.0 / 5
IMDb 7.4 / 10
allcinema 10 / 10
意外にいいと思いませんか?

<戦車がイイ>
戦車が大活躍します。私は軍事関係はまったくわからないのですが、そんな私にとっても画としてとても魅力的でした。あの狭い室内をどうやって撮影したのかと当時は不思議でした。

<物語がイイ>
筋立てはシンプルです。しかしかなり骨太です。どちらにも大義があり、信じるものがあります。「信念とは何か」を問う戦いが繰り広げられます。そしてその結末はほろ苦い物でしかありません。派手な描写はありませんが、オープニングの村襲撃シーンから圧倒されますし、人間対戦車には手に汗握らされました。ロシア人が英語を話すのはご愛嬌ですが、アフガン人はパシュトー語を話しています。

<監督がイイ>  
この作品はケビン・レイノルズの長編2作目。彼は知名度もそれほどなく不遇な扱いをされていますが、私は大のお気に入りです。ただハリウッドとはソリが合わない。単純な勧善懲悪にはしないし、むしろ悪役やジレンマに悩む役を魅力的に描いてしまう。そりゃ受けませんね(汗)。青春映画としてカルト的な人気を誇るデビュー作『ファンダンゴ』。冗長だけれどアラン・リックマンの悪役ぶりが最高な『ロビン・フッド』(1991)、テーマパークのショーもいいけれど、今みると活劇としては悪くない『ウォーターワールド』、そしてTVシリーズながら見応えのある『宿敵 因縁のハットフィールド&マッコイ』と但し書きがつくものの(笑)良作を連発しています。その上、あの『ダンス・ウィズ・ウルブス』では協力としてのクレジットになっていますが、演出協力に近い仕事だったらしく、本当はもっと称賛されてしかるべき存在なのです。

<出演者がイイ>
実力派のクセモノ揃いです。主役のジェイソン・パトリックはジェイソン・ミラーを父に持つ2世スターですが、このあとも『スピード2』『NARC』などで主役をはっています。ゲリラ側のリーダーは『スカー・フェイス』のスティーヴン・バウアー。戦車の乗員はみんなイイですよ。『ユージュアル・サスペクツ』のスティーヴン・ボールドウィン。『カジュアリティーズ』のドン・ハーヴェイ。『ハムナプトラ』のエリック・アヴァリという顔ぶれ。さらに特筆はジョージ・ズンザ。いつもは優しいあのズンザが本作では強烈な隊長を熱演。私は彼のベストアクトのひとつだと思います。

<スタッフがイイ> 音楽はあのマーク・アイシャムで彼の作品では初期のものですが、エキゾチックでエモーショナルな劇伴をきかせてくれます。また撮影のダグラス・ミルサムはジョン・オルコットの助手だった人で、その関係で『フルメタル・ジャケット』で一本立ち。M・チミノとも組んでいます。本作では殺風景な砂漠が舞台なのに、ダイナミックな構図と抜群の移動撮影で躍動感ある映像をつくっています。軍事アドバイザーはあのデイル・ダイです。

というわけで。今回のHD映像オンエアは相当貴重だと思います。DVD国内盤マスターとは違い、パシュトー語のところに英語字幕が焼き付けてあったので、アメリカ本国の素材だったと思われます。またDVDもリリース(しかも廉価版あり!)されています。ぜひぜひご覧ください。

○おまけ!私の自慢○
本作は日本未公開ですが、1度だけ劇場上映されています。東京国際ファンタスティック映画祭'89で、会場は渋谷パンテオンでした。あの大スクリーンでみられたことを私は誇りに思っています。他にも関連グッズはありまして、ここで紹介。

このサントラ、手に入れるまで大変でした。宝物です。
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なんと原作となった戯曲が収められた本です。
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映画祭のチケットとパンフレット、紹介ページです。
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2016年4月11日 (月)

「大人」になる

160411_2  あの時の感動は今でも覚えている。 はじめて『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』をみた時のことだ。よい映画をみた。そしてこの映画は今の日本に痛烈なメッセージを持っている。

 私が一番グッときたのはヒロシの回想シーンだ。 ヒロシがどのようにして大人へと歩み、やがて親となるかが描かれていた。 自分がちょうど似たような状況だったから余計にそう感じたのかも知れない。 でも自分は間違えていないと教えられた気がした。 つまり子どものために献身的に行動することは未来への貢献なのだということだ。 そしてそれができるということが「大人」なのだということ。

だから。

私たち大人は自問自答すべきだ。
なぜ今、これほど子どもたちの未来に翳りが生まれているかを。 そして自分が本当に「大人」になっているかを。
 確かに子どもの声はうるさい。
 働いている親についてもいろんな課題があるし、 親のモラルについても議論はあってしかるべきだ。 (それほど親のモラル低下は来るべきところまで来ている)

 また私は子どもがいないという選択肢を尊重する。 いろんな生き方があっていい。 しかしだからといって子どもをないがしろにした 生き方が許されるわけではないと考える。 社会で生きていく以上、子どもを見守る生き方は しなくてはいけない。

 満員電車のベビーカーに腹は立つだろう。 私もしたり顔で親の気持ちを代弁するつもりはない。 中には非常識な人もいるだろうから。 でもそこで怒ってどうなるのだろう?
 店内でかけずり回る子がいる。 「危ないよ」と声をかけても、 そのまま無視してもどちらでも構わない。 親に苦情を言ってもいいだろう。 でもその子たちを見守るというのは 最後は「許す」ということではないのだろうか。
 私たちはかつてみんな子どもだった。 それを大人たちが献身的に支えてくれたから今がある。 バトンはきちんとつなぐべきではないのか。

 子どもは宝だ。なぜなら子どもたちがいないと未来がつながらないからだ。子どもが幸せに成長できない社会が幸福なわけがない。

「大人」になろう。 そして「大人」の社会になろう。

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