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2013年8月 2日 (金)

『失楽園』

Situra ☆☆ エロスでもなければドラマでもない。さかりのついた人形にしかみえない。
 私は以前レンタルビデオ店で働いていたこと、そして映画ファンとしては18禁でしか描けない世界があることを実感していることもあり、一般的な感覚から言えば、アダルトビデオについて少なくとも色眼鏡ではみていないと思います。じゃあ、そんな立場から言わせてもらうと。 まず単純にエロスを感じない。こんなのちっともいやらしくない。その上、そこにドラマもありません。性の虜になってしまった壮年の男女の話になるわけですが、悪いけどそんなの近松門左衛門の頃から延々と描かれているもの。どれだけ抵抗しても、その魔力に魅入られることで、反社会的な生活へと突き進まなければならないところに、ドラマがあるはずなのですが、この物語ではそのあたりの痛切なものが胸に迫ってこない。たださかりのついた「人形」にしかみえません。まずこの時点で脚本の筒井ともみが完敗。(ついでにいうと原作者渡辺淳一も完敗。なんでこの人がもてはやされるのか私にはさっぱりわからない。そんなにエロを描きたいなら、スポーツ新聞のエロ面に書けばいいのです。この人の物語にはドラマがないから、映画にするとその薄っぺらさが丸出しになるのです) そしてこれを映像に置き換えた時の手腕も。かつての日活ロマンポルノやピンク映画をはじめ、それ以外に性というものを真正面から映像にしてきた作家たちには、これほどヌルイ作品もないのではないでしょうか。森田芳光が才におぼれるのは昔からですが、高瀬比呂志の映像設計も含めてひどいと思いました。
 黒木瞳さんの裸は見られます。それも映画としては立派な商品価値だと思います。でもエッチなものを求めているのなら。さらにはエロスというものを少し真剣に考えてみたいなのなら。世の中には埋もれている名作はたくさんありますので、そちらをすすめます。

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