« 『バトルシップ』 | トップページ | 『失楽園』 »

2013年8月 1日 (木)

『巨人と玩具』

Kyojin_2 ☆☆☆ 圧倒的な台詞の応酬と、色あせぬ風刺の鋭さ。
 録画するだけだったのがオンエアでずるずるとみてしまいました。とても1958年の映画とは思えないほど、今の時代にもそのままあてはまるものが多いのです。ちょっと前だったら伊丹十三や森田芳光あたりが扱っているかもしれない素材ですが、今ではスポンサーの顔色をうかがって、こんな作品はできないでしょう。増村保造が開高健の同名小説を映画化した本作は、消費社会で大衆を踊らせる側の人々をシニカルに見つめています。一歩間違うとステレオタイプだし、実際妙なイメージショットが鼻につく所もあるのですが、描き方がモダンでカリカチュアされているので、まったく古くささがないのです。何よりその台詞の応酬がすごく、しかも「大衆はバカなんだ」などといった刺激的なフレーズであふれています。このあたりは白坂依志夫のシナリオの凄さでしょう。高松英郎の猛烈ぶりもさることながら、さすがの伊藤雄之助の存在感には唸るばかり。
  あの絶望的なラストまで一気に突っ走る96分。その風刺の鋭さが色あせぬのは作品の力か、それとも社会が変わらないせいか。川口浩と共に私たちは自虐的に笑うしかないのです。

|

« 『バトルシップ』 | トップページ | 『失楽園』 »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 『巨人と玩具』:

« 『バトルシップ』 | トップページ | 『失楽園』 »