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2013年6月 9日 (日)

『Q&A』

Qa ☆☆1/2 演技陣の見応えは充分だが、この筋立ての弱さはいかんともしがたい。
 批評家からの酷評を浴びまくる作品が続くなどしてシドニー・ルメットが低迷していた時期の本作は、それほど悪いとは思えなくても、見終えた後にどこかボタンを掛け違えたような違和感がぬぐいきれない作品です。
 演技陣は見事です。ティモシー・ハットンの純な世間知らずぶりもいいですし、アーマンド・アサンテの小悪党ぶりもいい味です。極めつけはニック・ノルティ。彼のキャリアの中でもずば抜けた演技をみせています。
 しかしこの筋立ての弱さはいかんともしがたい。ルメットにとっては何度も何度も描いてきた正義というフィールドですが、いまさら観客も警官の不正ぐらいでは驚きません。ここではもっと日常的に心の中に潜む弱さが描かれるべきでしたが、そちらはいたって表層的な描写でしかないのです。原作はエドウィン・トーレス。そう、あの『カリートの道』の原作者です。これは腑に落ちる。じゃあ、なんでこうなったのか。どうも元凶はシナリオを書いたルメットにあるような気がします。ルメットは『プリンス・オブ・シティ』でも脚本を担当していますが、それ以外の脚本作はメロメロ。本作では演出もそれに引っ張られて主題歌を使うというとんちんかんぶり(あの平気で無音楽で通してしまうルメットが、ですよ!)。彼の低迷ぶりを象徴する作品です。

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