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2013年6月 9日 (日)

『Q&A』

Qa ☆☆1/2 演技陣の見応えは充分だが、この筋立ての弱さはいかんともしがたい。
 批評家からの酷評を浴びまくる作品が続くなどしてシドニー・ルメットが低迷していた時期の本作は、それほど悪いとは思えなくても、見終えた後にどこかボタンを掛け違えたような違和感がぬぐいきれない作品です。
 演技陣は見事です。ティモシー・ハットンの純な世間知らずぶりもいいですし、アーマンド・アサンテの小悪党ぶりもいい味です。極めつけはニック・ノルティ。彼のキャリアの中でもずば抜けた演技をみせています。
 しかしこの筋立ての弱さはいかんともしがたい。ルメットにとっては何度も何度も描いてきた正義というフィールドですが、いまさら観客も警官の不正ぐらいでは驚きません。ここではもっと日常的に心の中に潜む弱さが描かれるべきでしたが、そちらはいたって表層的な描写でしかないのです。原作はエドウィン・トーレス。そう、あの『カリートの道』の原作者です。これは腑に落ちる。じゃあ、なんでこうなったのか。どうも元凶はシナリオを書いたルメットにあるような気がします。ルメットは『プリンス・オブ・シティ』でも脚本を担当していますが、それ以外の脚本作はメロメロ。本作では演出もそれに引っ張られて主題歌を使うというとんちんかんぶり(あの平気で無音楽で通してしまうルメットが、ですよ!)。彼の低迷ぶりを象徴する作品です。

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2013年6月 8日 (土)

BD『ジョー・ブラックをよろしく』

Bdmeetjoeb  というわけですぐに買ってしまった。→review でもこれがまたなーんも映像特典がない。米国盤にもなーんもないので仕方がないのだが。

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2013年6月 7日 (金)

BD『レッズ』

Bdreds ウォーレン・ベイティの主演監督作品。ビットリオ・ストラーロのカメラが何よりも美しく、3時間近くがの長さがまったく苦にならない絵巻物のような映像物語。ブルーレイになって一層味わい深いのはめでたいのだが、なんと25周年記念盤のDVDにあった映像特典をすぱっと削除しちまいやがった! 何やってんだパラマウント! というわけでDVD所持者は絶対捨ててはいけません!

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2013年6月 6日 (木)

BD『LIVE2012/コールドプレイ』

Bdcoldlive2012  コールドプレイのマイロ・ザイロトツアーを収録した最新ライブ映像。来日公演に行ったぐらいなので嫌いなアーティストではないのだが、ここしばらくのアルバムがどうもピンとこなかったので、これも購買意欲はそれほどでもなかったが、NHKでのオンエアでびっくり仰天。凄かった! 一人一人に配布されたリストバンドが楽曲に合わせて輝くというのはすごいと思う。この規模の公演ならばぜひ体験してみたいと思わせる力のある作品。

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2013年6月 5日 (水)

BD『スキャナーズ』

Bdscanne  クローネンバーグの出世作で、やはり日本では本作から知名度がぐっとあがったといえる。私も今はなき大井ロマンでみて、頭がふっとぶ映像(ディック・スミス!)にも驚かされたが、映画としての独特の語り口にも魅了された。映像特典が予告編のみで他はなーんもないのはご愛敬だが、DVDもずっと廃盤でようやくまともなパッケージソフトとして再発されたことをよしとしよう。画質は水準クラス。音はリニアPCMで5.1chだがそれほどブラッシュアップされた感じはしない。

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2013年6月 4日 (火)

『50/50 フィフティ・フィフティ』

5050 ☆☆☆ 病気というできごとを人生の一場面としてとらえる余裕。
 難病ものには点数の辛い私。でもこれはなかなかのできばえでした。そもそもなぜ私が難病ものに点数が辛くなるのかを考えてみると、作劇上のあざとさ、そして不必要に過剰な演技合戦が鼻につくという2点に集約されるかと思います。この作品はそのあたりのさじ加減が絶妙でした。脚本家の実体験に基づいているそうですが、そのあたりができるだけ地に足の着いた演出につながったのかもしれません。また役者陣の演技アンサンブルは特筆しておきたいと思います。ジョセウ=ゴードン・レヴィットの演技も実に自然で、彼のよさとうまくかみ合っており、アンジェリカ・ヒューストンはもちろんのこと、アナ・ケンドリックやフィリップ・ベイカー・ホールやマット・フリューワー、はたまたいやーな元彼女役を演じるブライス・ダラス・ハワードまでもは、それぞれよい味を出しています。中でもおいしい役割を演じたのはセス・ローゲンで、ややダメ男ではあるものの憎めない友人役を彼のパブリックイメージのままに演じています。
 誰にも訪れるかもしれない病気というできごとを、誰もが共感できる人生の一場面にまでおとしこんだ余裕が感じられる佳作です。

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2013年6月 3日 (月)

『30デイズ・ナイト』

30daysn ☆☆☆ 吸血鬼譚としての面白さと独創性と。
 ずっと気になっていた本作。おもしろかったです。吸血鬼の物語にはいろいろな魅力があるようで、さまざまなバリエーションが生まれています。ここ最近ですと『ぼくのエリ 200歳の少女』なんかもそうだと思うのですが、これもそのひとつです。まず設定がよい。村全体を閉塞感が包むという状況は、ひいてはドン・シーゲルの『盗まれた街』やロメロの『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』などにもつながる王道です。そしてその設定の作り方が「なるほど、その手があったか!」というオリジナリティがあります。話が大風呂敷にならず、また人物描写などにつっこみどころを残しているあたりがB級作品の匂いをプンプンと漂わせていて、また続編とか出来ちゃうなあと苦笑していたのですが(事実パート2があった…)、まずはこの正編はありでしょう。

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2013年6月 2日 (日)

『伊豆の踊子』(1967)

Izuodori ☆☆☆1/2 胸締め付けられるイノセンスの喪失。
 で、もう1本、強烈に印象に残ったのがこれでした。川端康成の同名原作は何度も映画化されており、私も西河克己版2本(山口百恵版と吉永小百合版)をみていますが、この恩地日出夫版は段違いの出来映え。本当にみてよかった1本です。
 まずその映像構成が素晴らしい。恩地演出はじつにさりげなく、しかし芝居の勘所をはずすことはありません。物語のテーマはイノセンスの喪失にありますが、主人公の2人が世の中を知っていくことで、徐々に自分たちの未来を予見していきます。私は西河版のラストがいつもしっくりとこなかった。マイク・ニコルズの『卒業』のように冒険してしまえばいいのにといつも思いました。でも。この作品はなぜこの2人は結ばれないのかを、作品中で起きる出来事を巧みに織り込むことで実に腑に落ちる見せ方ができているといえます。撮影は東宝の職人カメラマン逢沢譲が担当していますが、西河版と比較するとちゃんと夜が闇になっている。あの温泉街が一歩間違うと人生の落とし穴になる可能性があることをきちんと映像で語っています。
 そして役者陣がよい。内藤洋子の白痴的なピュアさが大きな魅力になっていることは間違いありませんし、しっかりと映画女優になっているところは評価すべきでしょう。脇では乙羽信子もよいのですが、何と言っても江原達治演じる兄の栄吉が素晴らしい。新劇崩れの挫折感ゆえに主人公に共感する心の揺れがしっかりと出ています(でも黒沢年男はちょいと濃すぎかも知れません)。で、一番感動したのは音楽! 誰かと思えばあの武満徹でした。もうメインテーマでやられちゃいました! これだけの要素が揃えば名作間違いナシだと実感してもらえるでしょう。
 韓国映画がリリシズムの専売特許じゃないです。この作品の豊かな叙情性は映画ファンならではの醍醐味だといえるでしょう。

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2013年6月 1日 (土)

『ジョー・ブラックをよろしく』

 うわあ、久しぶりの更新だあ。日々生活しているといろいろあるわけで、そんな中で趣味を楽しんでいくにはこれまたいろいろとあるわけで。でもまた少しずつ更新していきます。のんびりとおつきあいください。

Meetjoeb ☆☆1/2 差し引きの結果でこの評価。これで駄作とはもったいない。

 で、この半年の中で一番強烈に印象に残った作品のひとつが間違いなくこれだと思います。世間的にはマーティン・ブレストの大失敗作(このあとの『ジーリ』でトドメとなるのだが)なのだが、単純に分類するのがもったいないぐらい美しさのある作品です。
 最大の弱点は欲張りすぎたことで、特にブラッド・ピットとクレア・フォーラニとの恋愛部分は失笑物。最初の出会いから初めてのキス、そして別れと再会までが、とにかくうざったい。特に最後の再会は蛇足です。しかしそれを補って余りあるのがアンソニー・ホプキンスとの部分。人生の最後を向かえる父の心情を本当に味のある演技で楽しませてくれます。彼のセリフは人生を語っており、そのどれもに深みがあります。ゆえにラストのパーティーの部分もぐっときます。トーマス・ニューマンのスコアも、エマニュエル・ルベツキのカメラも一級品。私みたいに世評だけで食わず嫌いをしているともったいない作品です。ただし。3時間が長いのも事実で、気に入る確率も少なめなのは承知の上でご覧ください。

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