『SOMEWHERE』
☆☆1/2 空虚を描く演出力が足りない。
いや、『ロスト・イン・トランスレーション』よりは評価してます。何かをやろうとしている意志は評価したい。そういう点で、ソフィア・コッポラは今、究極のインディーズフィルムメーカーなのかもしれません。きわめてパーソナルな視点で撮りたい材料だけ撮る。しかし彼女はセレブ。ここが評価を分ける所かもしれません。彼女の身辺で起きる出来事をそのままうつしとっても(しかも彼女は観客にそれをわかりやすく提示しようとする意志はない)、私たちには共感できる所がないのです。この作品も父親と娘の関係という普遍的なカテゴリーに入る作品にも関わらず、それが観客の琴線にふれるような感動作にはなりません。これがいいかどうかは別にして、その世界が時に嫉妬もふくめて観客の感情を逆撫でする時があります。さらに彼女の雰囲気重視の演出がほとんどバクチに近い。空虚を描く演出力はもっていないため、うまくいっているところとムダに近い所が並んでいるのです。本作もラストはいいです。ラストが素晴らしすぎる(でもそこまでがひどすぎるからなあ)。ここを魅力ととるか、ムダととるかでも評価が分かれます。
ただ本作の最大の魅力はエル・ファニングだという意見にはみなさんも賛成していただけるでしょう。『SUPER8』の彼女もよかったですが、本作も彼女でなかったら世界観が成立しなかったと思えるぐらいです。
意欲作であることだけは認めましょう。ただしエル・ファニングと偶然でできていることは忘れてはいけません。
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