『マイレージ、マイライフ』
☆☆☆1/2 現代人の生き甲斐とは何だろう。
ジェイソン・ライトマンの監督作で個人的にマルだったのは『サンキュー・スモーキング』、やや期待はずれだったのは『JUNO』。さて本作はどうかなあと楽しみにしていたら、これが素晴らしい出来映えで唸ってしまいました。
大きなテーマは生き甲斐。何を自分のよりどころとしているのかということです。人と人とのつながりが何よりではあることはみんなわかっている。しかし残念ながらそれは目に見えるものではなく、うつりかわりの激しい現在では一層それは頼りがいのないものになってしまっている。しかし可視化できるものは一時の充足感は味わえる。しかしその後には虚脱感が大きくのしかかってくる上に、人によって価値観が変わる。この主人公はどちらを生きる拠り所とするかを選択せずにふわふわと機上で過ごしている。それは現代社会の中で生き甲斐をみつけられずにふわふわしている人々の暗喩となっています。ふわふわとしていれば自分が傷つくことはないのですが、犠牲を払う覚悟がないと当然の如く、そこで得られるものはありません。そういう勇気を持つことについての一考察として、高い寓話性を保ちながら嫌みにならない軽さがある点を高く評価したいと思います。その部分はジョージ・クルーニーの演技が大きく貢献しています。確かに彼は何をしてもクルーニーな役者ではありますが、役柄の選択をすることでミスマッチの確率は大きく減っている。もうバットマンになることもないでしょうし(汗)。その中で彼はいつもきらっと光る演技をしている点はもう少し評価されてよい気がします。
素直に受けとめた方がより楽しめる作品です。そして楽しめた人には最後にそっと寄り添ってくれるようなあたたかさを感じさせてくれる作品です。
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