『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』
☆☆☆ 俳優の存在感とトーのスタイルの幸福な融合。
ジョニー・トー監督作には確固たるスタイルがあります。それは大きな魅力でもありますが、時にマンネリと感じてしまう部分でもあります。本作はそこをまるで逆手にとったような出来映えとなっていて、さすがの完成度となっていました。
いつものようなスタイルの部分はアンソニー・ウォンをはじめとした香港側の出演者が醸し出しています。このあたりは『エグザイル』や『ザ・ミッション』と同系統です。ところがここにジョニー・アリディが加わることで、まったく別の味わいが出てきました。ジョニー・アリディはそこにいるだけでスゴイです。だってその面構えだけで裏社会で生きてきたそのスジの者であることだとみている私たちが納得できるのですから。その男が娘のために復讐に燃える、けれども記憶に障害がある、これだけでぐっと来るのがトーの世界です。この滅多にお目にかかれない幸福な融合は一見の価値があります。
演出の緩急は自由自在、映像美はますますシュールになっています。一歩間違うとほとんどギャグ、一見さんにはやや敷居は高いのも事実です。それでもベースはジョニー・トー節。そこの世界に芳醇なコクがうまれているのですから、はまると抜けられない作品です。
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