『わたしを離さないで』
☆☆☆ あまりにも物悲しい絶望の果て。
カズオ・イシグロの原作が出版された時になんとなくあらすじを聞いていた本作。PV界では名前の知れたマーク・ロマネク監督で、出演者が注目の若手3人。劇場公開時に見逃した1本でしたが、これが思わぬ拾い物でした。
この映画の本筋というか、話自体のタネは割とあっさりばれてしまいます。しかしその先が本当に大切な所であって、この作品のユニークな所となっています。全編を覆うように醸し出される絶望。そしてさらに最後に突き放されてしまう絶望の果て。今の時代を反映するかのように登場人物たちは抵抗することもなく、その運命を受け入れる中で自分の生きる意味を考えています。その様子があまりにも物悲しすぎます。やや表層的すぎる人物描写と、物語の単調さという欠点はありながらも、プロダクションデザインが素晴らしく、画で世界観を伝えています。主役3人は自分の役柄を掴んでおり、中でもキャリー・マリガンはアンサンブルの中で「受け」の役割を果たし、きらっと光っています。
『ガタカ』が好きな方はきっとこちらも気に入るでしょう。あちらほどのエモーショナルな激しさはありませんが、こちらが突きつける「絶望」はより現実的に思えてなりません。
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