imm sound体験記
で、昨日の『アメイジング・スパイダーマン』は久しぶりに平和島シネマサンシャインまで足を運びました。スペイン製の話題の音響システム、imm soundを体験したかったからです。ここ平和島シネマサンシャインのシネマ1が国内初導入です(そうそう、平和島シネマサンシャイン・シネマ1はシートが革張りに、そしてスクリーンが少し大きく、パールスクリーンになったそうです。そういうことも重要です)。
imm soundについて簡単に説明すると、今まで音響がフロント、センター、リアとで構成され、平面方向でしかサラウンドを表現できなかったのに対して、側面にも段差をつけたり、天井面にもつけたりするなどして、垂直方向での音場も表現できるようにしたシステムのことです。何しろチャンネル数でいくと14.1chから23.1chというのですから驚きです。ちなみにこのフォーマットで制作されていない通常のステレオや5.1chなどの作品も変換して再生可能です。
場内に入って驚いたのがそのスピーカーの数。まず天井部に5ヶ所16台(シーリング・サラウンドスピーカー)。さらにサラウンド側も左右側面に一般的なスピーカーの配置6台ずつ(サイドサラウンドスピーカー)に加えてその上段にもう1列(サイドトップサラウンドスピーカー)3台。さらにそれぞれの両側に筒状のスピーカーが並んでいます(形状や型番わからず)。
さてさて。そのスピーカーの嵐のようなimm soundですが、まず結論からいうと何の感慨もありませんでした。というか予想通りの音だったのです。ひとことでいうと音はガンガン鳴っているけれどウソっぽい音ということになるでしょうか。また『アメイジング・スパイダーマン』に関しては音場の大きな変化を感じ取ることができませんでした。
映画館は大きなスピーカーで大きな音を出せばよいのではとお考えでしょうが、そう簡単にはいきません。なぜなら大きな音は歪みやすく聞きにくくなるからです。現在のデジタルサウンドは再生帯域もアナログの頃より飛躍的にひろがり、音も抜群によくなりました。それでも映画にあるべきサウンドはただひとつだと思うのです。それはリアルでスピーカーの存在を忘れ、画面から出ているように聞こえるということ。それはモノラルのオプチカルトラックでもJBLのようなアメリカンシネマサウンドのデジタルトラックでも同じ真実なのです。
本編上映前に2chと、それをUPMIXした音が交互に再生されるデモが流れていましたが、私はよりリアルになったというよりは残響がついた人工的な音にしか聞こえませんでした。まるでお風呂場のような感じなのです。これは至極当たり前の結論で、本来声が出る場所はひとつ(音源)であるにもかかわらず、そんなにスピーカーがあったら、音の定位は難しくなります。さらには小屋の音響特性もあります(一応imm soundの場合はそういうのも含めて調節はするらしい)。かつてウェストレックスにいた評論家の伊藤喜多男氏は、「オーディオのエンジニアはもっと生の声を味わうべきだ。そしてその再生がいかに難しいかを学ぶべきだ」と語っていたことがありました。IMAXデジタルシアターの音をほめそやす人がいますが、あんなに嘘くさい音は伊藤先生だったら鼻で笑ってしまうことでしょう。
試みとしてはおもしろいのですが、わざわざ体験しなくてもよいと思います。またドルビーデジタルEXやドルビーデジタルプラス7.1chがまったく普及しなかった実情を考えると、今後の普及には疑問符が付かざるをえません。次に来るシネマサウンドの革新はどこにあるのか、まだまだ未来は見えないというのが現状でしょう。
シネマサンシャインのプレスリリース
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