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2011年8月22日 (月)

『コクリコ坂から』

Kokuriko ☆1/2 過去のおしつけ、大安売り。
 だれも待っていなかったであろう宮崎吾朗の第2作が登場。少女マンガを原作にしながら、ほぼ原型をとどめないまでに脚色をした宮崎駿。それを演出した宮崎吾朗。ではここに作品として何が残ったのでしょう。それは山崎貴の『ALWAYS 三丁目の夕日』のような過去のおしつけであり、大安売りでした。
 恋愛物でありながらヴィヴィッドな感情は表出されず、戦後の混乱期を乗り越えても表出する悲劇性すらありません。あるのはノスタルジアだけであり、そのノスタルジアを型のようにしか表現できない稚拙な演出です。宮崎駿としては過去の世界でありながらノスタルジアに浸ることはなくやってほしかったのでしょう。しかしカルチエラタンの様子は非現実的で不気味でしかなく、ここまでくると親父の説教どころか、官庁などが出す地域史の1ページに掲載された昔話程度にしかなっていません。またひとりの女の子の生き方にしても感情の表出にリアリティが欠如しています。あれだけ自分の感情を表に出さない女の子が、なぜ途中で「嫌いになったのなら・・・」などと問い詰められるでしょう? 時代考証の末のディテールはただひたすらうるさく、邪魔なだけです。なぜあれほどこれみよがしに映すのでしょうか。最後の徳丸社長はどうみても徳間社長なのでしょうが、彼の描き方に温度差を感じるのも苦笑するしかありません。
 その期待値の低さから「悪くなかったよ」という評になると思いますが、それは褒め言葉ではないはずです。
(109シネマズMM横浜7にて)

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