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2011年8月27日 (土)

『家族ゲーム』

Kazokuga ☆☆☆ 才気だけで勝負できた若さ。
 実はみていませんでした。森田芳光の名を知らしめた本作はそれだけの力のある作品でした。
 これだけの作品ですのですでに語り尽くされている感はありますが、それでも何がすごいのかを考えてみると、映像設計につきるのではないかと思います。話自体は家族の崩壊ですし、日本的なモラルが崩れてゆく姿は過去に何度も何度も描かれています。では何が新しかったかというとそれを映像で語ったところにあります。船で行き来する松田優作。マンションという間取りをアンバランスに切り取るうまさ。そしてその映像設計を増幅するささやくような台詞の応酬。これをやりとげてしまったのは森田芳光の才気です。しかしその後の森田芳光をみるとこれを完成形に持ち込むことはありませんでした。一番近かったのは私の大好きな『それから』ですが、本作の鋭さからは後退している部分も少なからずあります。そしていまだに『家族ゲーム』『ときめきに死す』『それから』を上回る評価を得た作品はないのですから、若さとは時に最強の武器であることを痛感するのです。松田優作は言うまでもありませんが、伊丹十三の演技巧者ぶりには唸るしかありません。監督しての腕もありましたが、成熟した演じ手としてもっとみたかったという思いがいまさらながらにあります。
 森田芳光が大好きなわけではないのですが、彼のスゴさをもっとみてみたいと願っているファンは多いのではないでしょうか。そしてそれは本作を超える作品を作らない限り、世間は認めないのかもしれません。

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