『十一人の侍』
☆☆☆ 誇りと無念と運命と。
工藤栄一の集団時代劇三部作のラストになる本作。前2作が映画史に残るような凄さなのでそれと比較してしまうと落ちてしまうのですが、そんじょそこらの時代劇とはレベルの違う出来になっていました。
ここでは忠義を貫き通すことの難しさみたいなところが描かれていて、そういう部分ではスタンダードな題材とよべるでしょう。夏八木勲演じる作戦の中心的人物が身を隠すためにとった行動が、妻や弟をも悲劇に巻き込んでしまう姿には胸うたれるものがあります。しかし前2作の脚本を担当した池上金男の描く物と比較するとどこか様式的で時代劇の中では既視感があったのは否めません(特に『大殺陣』の陰惨すぎるほどのリアリティは凄かった)。また『十三人の刺客』の最大の衝撃はその凄まじいまでの殺陣にありました。集団が入り乱れて命がけで戦うそのリアリティには息をのむしかありませんでしたが、ここではさすがに3回目ということでそのあたりにも新しさは感じられません。また話の筋立てのタイプの違いも影響はあるかも知れません。今ではすっかりメジャーな役者さんもこの頃は若手。その無名の必死さはいい影響を与えています。そして『十三人の刺客』に続き暴君役となる菅貫太郎! この人をみるだけでも本作は価値があります。
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