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2011年7月27日 (水)

『しあわせの隠れ場所』

Blindside ☆☆1/2 よい作品だが、どこか経済的優位にまつわる居心地の悪さがある。
 悪い作品ではありません。実話がベースという事で「へぇ」と感心するしかありません。ただこうやって奥歯に物が挟まった言い方しか出来ないのは、めでたしめでたしとすっきりした気分にはならないためで、それはこの映画がおとぎ話でよいのかという背景が絡んでくるためです。
 事実ここで描かれている出来事はおとぎ話に近い。少なくともこの作品をみて誰もが真似できる話ではないし真似しようとも思ってない。ましてや、作り手側にそういうことを喚起しようとか、何か社会的な意義を提起しようとか、そんな姿勢もありません。つまりこの作品はおとぎ話のような出来事をおとぎ話として描いており、それを観客が楽しむ材料にしか使っていない。南部という地域で厳然とある経済的な格差が、このような形でしか乗り越えられないという現実でよいのか。黒人側は白人側にこのような形でしかチャンスをもらえなくてよいのか(エンディングロールに流れるFive For Fightingの曲が"Chances"というのも皮肉。とてもいい曲ゆえに余計に寂しい)。そんなことがどうしても心のどこかに引っかかるのです。主演女優賞を獲得したサンドラ・ブロックの演技は大したことはなく役柄で儲けた感じ。他の役者陣も特筆すべきような点はありません。
 最後までみせてしまう誠実さをこの作品はもっており、そこは評価します。しかしそれをそのまま真に受けて、社会はこういうものなのだという受け取り方をしてしまうことへの危険を感じる作品で、そこに無神経な点は残念です。そのあたりへの目配せがもう少しほしかったというのは正直な所です。

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