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2011年7月14日 (木)

『疑惑』

Giwaku ☆☆☆ 火花バチバチ。
 WOWOWで松本清張の連続オンエアがあったのですがその時にみた1本。上質の舞台劇のようでありながら映画らしい時間の濃密さがあり、楽しむことができました。いや、筋自体を追うとそれほど推理物としてはよいプロットではないのです。しかし野村芳太郎の鮮やかな語り口、それを支える川又昂の映像設計と森田郷平のプロダクションデザイン。それが映画ならではの表現をうみだしているのです。ここでいう映画ならではの表現とはずばり省略と濃度の緩急です。この文法は演劇ともテレビとも違います。このあたりを実に巧みに操っているのは見事としか言いようがありません。桃井かおりは正直あまり評価していない女優さんなのですが、ここまではまれば拍手です。一方の岩下志麻の方はむしろ損な役回りにもかかわらずこれまた素晴らしい演技をみせており、2人の間で火花がバチバチしている様子を私たち観客は存分に楽しむことができます。そしてそれを存分に楽しめるのも演出の確かさなのです。
 野村芳太郎ってどんな監督? ときかれたら私はこの作品を代表作のひとつに推すでしょう。『砂の器』よりも彼の演出の腕が実感できるのはこれです。

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