『竜二』
☆☆☆ 金子正次の存在がすべて。
おくればせながらようやく。ちょうど私が川崎に引っ越してきた1983年頃に「ぴあ」が推していたのがこれでした。本作の魅力は金子正次の存在がすべてでしょう。笠原和夫が「やくざのずるさは描いていない」という評はその通りだと思いますし、この映画の垢抜けしない泥臭さがうざったく感じる向きもあるはずです。しかし小市民としてのやくざである竜二の忸怩怩たる思いが金子正次自身とオーバーラップするのは唯市無比の本作の魅力ですし。作品が持つ力とはそういうものであってよいと思うのです。さらにこのタイプの奇跡は何度も起こせるはずもなく、その後低迷することが多い中で、夭折した映画俳優ゆえに、その魅力に永遠の輝きが与えられたといっても過言ではないでしょう。
志のある作品です。そして気に満ちた作品です。スポットライトが当たったのは偶然かもしれませんが、そんな運命を引き寄せる力、そしてその輝きをずっと失わない力を持った作品であるのは間違いないでしょう。
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