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2011年7月31日 (日)

『タイタンの戦い』(2010)

Titan2010 ☆☆ どさくさまぎれ。
 どさくさにまぎれて3D変換され、どさくさにまぎれてサム・ワーシントンを担ぎ出したよくわからない作品だと第一印象を持ったあなた! その通りです。勢いだけの空虚な作品です。ハリーハウゼンのダイナメーションじゃなくて最新のモーションコントロール技術だったらオリジナルは面白かったに違いないと失礼な空想をしていたあなた! それは間違いです! あれはハリーハウゼンが悪かったのではなく、いずれにせよつまらんかったことが証明されてしまいました(汗)。とりあえずマッツ・ミケルセンは素晴らしかったのですが!

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2011年7月30日 (土)

『ウルフマン ディレクターズ・カット版』

Wolfman ☆☆1/2 変身シーンはすごい。それが魅力ではいけないのか?
 制作時のトラブルで公開延期となっていた本作。それでも緊急登板になったのがジョー・ジョンストン、音楽はダニー・エルフマン、主演にベニチオ・デル・トロ、そしてメーキャップにリック・ベイカー! これで期待するなという方がムリですよね(汗)。しかしその期待は無残にも・・・。
 とにかくあふれんばかりの「狼男」愛は感じるのですが、なぜこうまで作品としての魅力が欠けてしまったのだろうと考えるに、どの要素もあらんかぎりのものをぶちこんでバランスが悪くなってしまった点があるのではないかでしょうか。ゴシックホラーとしての耽美さは臭いがあるものの妙に健全さを保とうとしており、様式美はちらっとあるもののどこかシステマチックな安さもあり、ドラマとしての深さはちらっとあるものの、突っ込み不足の感が否めないところもあり、アクションシーンは豪快さはあるものの既視感ありまくり・・・。ベニチオ・デル・トロ、エミリー・ブラント、ヒューゴ・ウィービングは手堅い演技を見せますが、アンソニー・ホプキンスは作品世界を理解しているとは思えず、ひどい演技です。一番残念だったのが狼男への変身シーン。いやデジタルエフェクツをベースにしながらベイカーらしい独創性は感じられるのですが、どうしても『狼男アメリカン』などと比較すると見せ場としての盛り上がりに欠けているのです。視覚効果だけが売り物ではいけないとは思うのですが、視覚効果を最大のウリにすることはいけないことではないはずです。結局ホラームービーなのですからそういうシーンを私たちはメインにしています。その背景に「何か」を感じるわけで、そういうところに力を注いでしまうと妙なバランスになってしまうのだと思います。
 魅力的な食材を使って懸命に調理したにも関わらずできあがった料理は「????」。そんな作品です。

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2011年7月29日 (金)

『SUPER 8 スーパーエイト』

Super8 ☆☆1/2 なぜこれは共感できないのか。
 予告編の迫力が凄かったので少しだけ期待していました。少しだけというのはJ・J・エイブラムス監督作品と私はあまり相性が良くないので。で、本作はつまらんくはなかったものの、どこか肝心なところが足りなかったなあという感じでした。
 前半はものすごく楽しめました。題名のとおり、この映画には8ミリ映画製作が出てきますが、私も8ミリ映画製作を体験していて、にやりとさせられる雰囲気があり、そんな高揚感がよい方向に作用していました。ところが後半謎解きの部分で減速、そして種明かしで明らかに失速。話の「種」自体は悪くないものの、正体のデザインには幻滅。荘厳さのかけらもありませんし、エモーショナルな要素も足りません。スピルバーグでいくならばそれこそジュブナイルな『未知との遭遇』か、それこそちょっとベタだけど『グーニーズ』みたいな路線でよかったはずですが、J・J・エイブラムスにはそういう資質はないようです。
 子役たちには花マルをあげましょう! みんなとてもよかったです。中でもエル・ファニングはびっくり。幼い頃はただ単になんとかの七光りじゃんと思ってましたが、ここでは姉ちゃんなんて目じゃない存在感です。
 結局ここでの登場人物たちには共感、というか「いいなあ」みたいな羨みといった方がよい気持ちを観客はいだくことができず、それが大きな欠点です。エンドクレジットで流れる「ゾンビ映画」の方がはるかに楽しさを感じるのは困りものです。
(TOHOシネマズ川崎4にて)

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『ブラック・スワン』

Blackswan ☆☆☆ 抑えた演出が裏目に出ている。
 『レスラー』のダーレン・アロノフスキーが監督した本作は、アーティストにとっての表現とは何かという点で、興味深い作品になっていました。ただ上手く消化できていたかどうかとなると疑問符もついたのも事実です。
 身体表現であるバレエもそうだと思うのですが、演劇や映画などでアーティストが演じるということは、人によっては自らの命を削るような思いで作り上げている面があります。そんな作業の果てには時に哀しくて残酷な結末が待っていることもあります。事実私たちはそんなアーティストたちのエピソードを知っています。本作で主人公は、白鳥の湖という作品の中で役柄として求められた部分、演出家の求める部分、さらには親が自らに求める部分や、自らがなりたい理想の部分とでもがき苦しみます。彼女がようやく手に入れた「パーフェクト」という領域が、禁断のものであったというところまで、アロノフスキーは抑えた演出で描いています。ただそれが裏目に出ている部分もあり、結果的に私たちの想像の域を超えることはなく、凄まじい状況を観客につきつけた『レクイエム・フォー・ドリーム』ほどの衝撃はありません(ただし映像表現という意味では本作の方がずっと深いものになっています)。それこそヴィヴィアン・リーの伝記の方がはるかに過酷ですし、すでに古今東西の様々な作品でアーティストの狂気はとりあげられています。ですから何かアロノフスキーならではの斬新さがほしかったなあというのが正直なところです。
 ナタリー・ポートマンはオスカーを獲得しましたが、私はそれほど彼女が狂気の淵をのぞきこんでいるようにはみえず、やや不満が残りました。一方演出家を演じるヴァンサン・カッセルは、いろいろ考えているようでして実はそれほど深く考えていなそうな軽さが出ていて見事でした。
 力作ではあると思いますが、何かもうひとつパンチは足りない作品です。
(TOHOシネマズシャンテ2にて)

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『127時間』

127hrs_2 ☆☆☆ 生への渇望を力業で描く。
 ダニー・ボイルの新作は実話ベースの物語。私はこの出来事を知っていたので、それをダニー・ボイルが映画にするときいて、楽しみ半分不安半分でしたが、結果的には、彼の力業がプラスの方向に出ていました。
 上映時間が94分ということでもわかるようにダニー・ボイルは余計な物を徹底してそぎ落とし、彼らしいソリッドな映像スタイルで描いています。主人公の人生や出来事の背景はほとんど描かれていません。このダニー・ボイルの選択は賛否両論あるかと思いますが、今回は成功していると思います。同じように自然の中でのサバイバルが背景になっているショーン・ペンの『イントゥ・ザ・ワイルド』とは目指す作品像が違っているので、同じようにドラマをたっぷりと織り込んでしまうと、肝心な出来事がピンぼけになってしまったでしょう。主人公の生き方は最低限的確に伝えていたと思います。おそらく彼は自分の人生を自分でエンジョイしてきた。わりと何でも自分でやってきたし、あまり人には頼ってこなかったのでしょう。でもそれはウラを返せば人のために何かをすることはなかったし、誰かに助けを求めると言うこともなかったのでしょう。彼は本当の意味で生きるということを実感していなかったかもしれない。ゆえにあのラストで"Help!"と叫ぶシーンにグッと来るのです。あの叫びは生への渇望の中から生まれてきた彼の魂の叫びなのですから。ジェームズ・フランコはうまくはまったという印象がぬぐえない部分もありますが、それでも熱演であることは間違いないでしょう。
 またカメラマンを2名、しかもあえてスタイルを統一しないで撮らせてそれをひとつにしたという試みも興味深いです。役割分担を決めて、というのはありますが、 これほど意図的に違う撮影スタイルを混在させたのは珍しいと思います。
 最後に。この作品をみていて思いだしたのは同じくダニー・ボイルの『ザ・ビーチ』でした。実は「生の実感」というモチーフという意味では本作はあのさんざんな評価になってしまった『ザ・ビーチ』の同工異曲であるように感じました。あの作品はどこかピント外れでありながら、ところどころに忘れがたいよい瞬間を持っている作品だと私は思っているのですが、本作はダニー・ボイルのリターンマッチだったような気がてなりません。
(TOHOシネマズシャンテ2にて)

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『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』

Xmen1stc ☆☆☆ きちっと娯楽。ツボはおさえてる。
 それなりの成功を収めた3部作。スピンオフでウルヴァリンが主演した作品。それらをすべて1度リセットする形で、X-MEN誕生の頃を描く本作は、シリーズ中1番の完成度になっていました。
 3部作がそれなりの幕開けをしたにもかかわらず、ブライアン・シンガーの演出にケレン味がなく、さらにキャラクターの立たせ方もうまくありませんでした(ハル・ベリーがオスカーかっさらうという想定外の事態も話をややこしくしたかもしれません)。職人監督のブレッド・ラトナーが演出した3作目が一番楽しめたというのも皮肉かも知れません。またウルヴァリンが主演のスピンオフが楽しめたのもキャラクターの描きわけがうまかったからです。そう、この作品の肝はキャラクターの描写。それがうまくいくと自然に話が転がるのです。本作のよさはそこをクリアできたこと。これは脚本家の手柄だと思います。その結果、冷戦下のキューバ危機という背景を巧みに取り入れ、ミュータントと人間の対立構造に説得力をもたせながら、娯楽作として楽しめる作りになっています。またもうひとつ貢献しているのは演技陣。キャスティング。ジェームズ・マカヴォイは言うまでもありませんが、素晴らしかったのは若き日のマグニートーを演じたマイケル・ファスベンダー。彼のスピンオフがみたいと思わせるほどで、魅力たっぷりです。
 カメオ出演やちょっとした小ネタで、旧シリーズをみた人にもさりげなくサービス。でも何より本作はきちんとエンタテインメントとしてツボを押さえてることが一番評価すべきことでしょう。みた人が「続きをみたい!」と思わせたことが勝因です。
(ユナイテッドシネマ豊洲6にて)

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ユナイテッドシネマ豊洲(6)

(席70 見*** 音*** 環**1/2)
豊洲では1番少ないキャパの劇場。11と作りは似ているが、あちらがほぼ方形なのに対して、心持ち縦長な感じ。サラウンドのセパレーションはなかなか。

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2011年7月28日 (木)

『恋するための3つのルール』

Mickeyblue ☆☆☆ 小粋で尖っている。笑えるシチュエーションのうまさ。
 予想外の拾いもの! これはおもしろかったです。この作品、邦題でものすごく損をしているかもしれません。原題は"MICKEY BLUE EYES"、「青目のミッキー」とかになるのでしょうが、これの意味がマフィア内で通じるあだ名(例えばナイフで刺されて命拾いをしたことからついたラッキー・ルチアーノとか、映画にもなったバグジーこと、ベンジャミン・シーゲルとか。)という設定で、これも知らぬ間に話がどんどん大きくなり・・・。マフィアをめぐる小ネタ之の数々は爆笑必至でその手の映画をよくみている人はなおさらでしょう。ジェームズ・カーンやバート・ヤングの怪演もニヤリとさせられます。一方ラブコメとしてはやや型どおり、ヒュー・グラントはいつもの彼ですし、それ以上の物はありません。でもいいじゃないですか、それでも。手垢のついたジャンルでも上手に作る事は難しい。これはそれをなんとかやり抜いています。この映画は笑わないとソンです。

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2011年7月27日 (水)

『しあわせの隠れ場所』

Blindside ☆☆1/2 よい作品だが、どこか経済的優位にまつわる居心地の悪さがある。
 悪い作品ではありません。実話がベースという事で「へぇ」と感心するしかありません。ただこうやって奥歯に物が挟まった言い方しか出来ないのは、めでたしめでたしとすっきりした気分にはならないためで、それはこの映画がおとぎ話でよいのかという背景が絡んでくるためです。
 事実ここで描かれている出来事はおとぎ話に近い。少なくともこの作品をみて誰もが真似できる話ではないし真似しようとも思ってない。ましてや、作り手側にそういうことを喚起しようとか、何か社会的な意義を提起しようとか、そんな姿勢もありません。つまりこの作品はおとぎ話のような出来事をおとぎ話として描いており、それを観客が楽しむ材料にしか使っていない。南部という地域で厳然とある経済的な格差が、このような形でしか乗り越えられないという現実でよいのか。黒人側は白人側にこのような形でしかチャンスをもらえなくてよいのか(エンディングロールに流れるFive For Fightingの曲が"Chances"というのも皮肉。とてもいい曲ゆえに余計に寂しい)。そんなことがどうしても心のどこかに引っかかるのです。主演女優賞を獲得したサンドラ・ブロックの演技は大したことはなく役柄で儲けた感じ。他の役者陣も特筆すべきような点はありません。
 最後までみせてしまう誠実さをこの作品はもっており、そこは評価します。しかしそれをそのまま真に受けて、社会はこういうものなのだという受け取り方をしてしまうことへの危険を感じる作品で、そこに無神経な点は残念です。そのあたりへの目配せがもう少しほしかったというのは正直な所です。

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2011年7月26日 (火)

『フォー・クリスマス』

Fourxmas ☆☆1/2 アメリカ映画の豊かさは感じられる贅沢。
 残念ながらビデオスルーになってしまいました。でも向こうでは手堅い興行収入をあげたコメディ。ヴィンス・ボーンはギャランティに対してもっとも効率よく稼げるスターだそうで、いつもながら興味をそそる題材に出ています。これもそう。なにしろキャスティングがスゴイ。共演がリース・ウィザースプーン、ロバート・デュバル、ジョン・ヴォイト、シシー・スペイセク、メアリー・スティーンバージェンと主要キャストのうち、オスカー受賞者が3人もいる! それでいて90分未満のコメディだなんて!
 原題のフォーはfourのほうで、カップルのそれぞれの両親が離婚しているので家族で過ごすクリスマスが4つになっていることを示しています。で、その親たちがみんな強烈。ちょっと話が設定負けしているところはありますが、それでもこの絡みは大笑いできます。中でもシシー・スペイセク扮するヴォンス・ボーンの母とのゲーム大会では大爆笑でした。ただ後半のおとし方が単純に家族の絆万歳になってしまったのはもったいないし、ヴィンス・ボーン主演作としては彼の個性がいきているとはいえないでしょう。
 でも上映中は充分楽しめるし、こういう映画がきちっと作られているのは、アメリカ映画の豊かさを象徴しているのかもしれません。

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2011年7月25日 (月)

『狼よさらば』

Deathwisf ☆☆1/2 B級としては拾いものだが、ブロンソンはブロンソン。
 まあ、ブロンソンですよ。それで作品の説明がついてしまう(汗)。デスウィッシュシリーズの記念すべき第一作目なのですが、でも特段オリジナリティがあるわけではありません。ブロンソンじゃなかったらどんな作品になったか、ちょっと思いをめぐらせてしまいます。

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2011年7月20日 (水)

『月に囚われた男』

Moon ☆☆☆ SFとして抜群の冴え。
 これはよかった! 劇場でみなかったことを深く後悔しました。採掘現場で働き続ける男の物語なのですが、地に足の着いた設定でありながら、SFというフィルターで人間という存在についてみつめており、絶妙なアプローチを実現しています。サム・ロックウェルには初めて感心。正直今まではどうでもいいか、やりすぎな脇役ばかりだったのですが、実はジャック・レモンのようなポジションができる人なのかもしれません。また声の出演になるケビン・スペイシーはこれまた見事な存在感を発揮しています。ひょっとすると『ガタカ』のように後生ではエポックメイキングな1本になっているかもしれません。それぐらい近年のSF作品では抜群の冴えをみせています。

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2011年7月19日 (火)

『欲望という名の電車』

Stcarnamed ☆☆☆ 心という闇の中をのぞき込む最良の映像化。
 テネシー・ウィリアムズの戯曲を映画化した本作。なるほど、これはクラシックと呼ぶにふさわしく、何度も何度も作りたくなる深い魅力があると思いました。まず主な登場人物それぞれの造形が個性的である事。ステレオタイプにならず、それでいてそれぞれに普遍的な人間的な脆さも含んでいる。これは俳優さんにしてみると演じ甲斐のある役柄でしょう。そして物語自体が演出家を刺激する自由度がありながら、多層的な構造をしているところも大きな魅力でしょう。エリア・カザンの演出は、演技陣から巧みな引き出し方をするだけでなく、その演技者自身の人間性すら透かしてしまう鋭さがあり、またその南部のうだるような湿気の中で暮らす社会的底辺で生活する人々を視覚的な表現でも的確に構築しています。ただそれが映像としての魅力なのか、戯曲自体が持っている魅力なのかは評価がわかれるところでしょう。
 さて語るべきはマーロン・ブランドよりもビビアン・リーでしょう。彼女の演じるステラは絶品の一言です。美しく儚げで純粋でありながら、その奥にある影、ずるさ、欲、肉体的な快楽、そして秘密。だからいけないとわかっていても、もっとその人を知りたくなる。そしてその先にある悲劇。わかっていても繰り返される不幸。ビビアン・リーは、この作品でそれを表現してしまっている。その凄さに圧倒されながら、それが彼女にとって幸福だったのか不幸だったのかにまで思いを馳せてしまいます。
 心という闇の中をなぜ人はのぞきたくなるのか、観客は自問自答しながらビビアン・リーの名演と共に、永遠の忘れ得ぬ物語を心に残すのです。

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2011年7月18日 (月)

『ペイバック』

Payback ☆☆1/2 ガイ・リッチー向けの素材。
 メル・ギブソン主演というよりはブライアン・ヘルゲランドの監督作品ということで気になっていた作品。見終わった後としては、なんかなあというのが率直な所です。作りたかったのは多分軽いテイストのクライムアクションなのでしょうが、映像設計も思い上に、演出にその意図が感じられず、演技陣のテンションもバラバラ。ガイ・リッチーとかがやったら手堅くまとまった素材だったかも知れません。

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2011年7月17日 (日)

BD『ディア・ハンター』

Bddeerhj  今回は収録時間表示に期待を抱いていたが、やはりというか何というかだめだった。フランス版のブルーレイと全く同じ状況で、たしかに時間は183分で収録されていた・・・が。音のピッチが高い。これは未確認なのだが、機械的にPAL素材の画と音(もしくは音素材のみ)を183分にしているとしか思えない。カナルプリュスが権利を所有している状況では、本作はまともな形でリリースされないということだろう。(日本語字幕もひどいし) 最後の望みは米国盤BDのリリースということになる。はたしていつになるだろうか?
 結論カナルプリュスには気をつけろ!

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2011年7月16日 (土)

CD「Ultimate Collection (DVD付)」Sade

Sade_2  シャーデーの2枚目のベスト。前回からすでに17年もたっていたことにも驚きだが、その間にオリジナルアルバムが2枚しかリリースされていないことにもびっくり。でもこの人たちはもはやワンアンドオンリーの道に進んでいるわけで、何も言うことはありません。今回のベストは入門者にも敷居は低い上に、初回盤にはビデオクリップのベストDVDまでついているという大サービス盤。あとは来日!

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2011年7月15日 (金)

『八つ墓村』(1977)

Yatuhaka ☆☆1/2 謎解きよりも土着オカルト怪談を語りたいのだ、金田一さん。
 野村芳太郎つながりで本作。同名原作2度目の映画化です。これ、小さい頃にテレビのオンエアで山崎努の村民虐殺シーンをみて強烈な印象が残り、以来こわーい作品と敬遠してきました。で、HD映像で、しかもシアターで楽しんじゃったのですが、想像以上にかなりグロテスクな場面のある映画でした。だって「たたりじゃー」ですもん。(同世代の方、わかりますね(笑))
 まず大前提としてミステリーを期待してはいけません。渥美清の金田一耕助は悪くはありませんが、石坂浩二の金田一のように謎解きの場面にカタルシスはまったくありません。市川崑がその映像テクニックを駆使して我々観客をミステリーの楽しさを味合わせてくれたのとは対照的に、ここで野村芳太郎は土着オカルトのような世界を怪談話のように語ります。それをおもしろいと思うかどうかが評価のポイントになるでしょう。そういう意味で横溝正史の世界観はうまく表現していると言えますが、観客が期待している金田一の世界は表現していません。土着の恐ろしさは恐ろしさで、それを知りつつ知恵を使うのが金田一耕助もののおもしろさだと考えているので、私は正直期待はずれでした。しかしそれを差し引いても強烈な印象を残す場面が多く、ホラー映画ファンは一見の価値は充分にあります。

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2011年7月14日 (木)

『疑惑』

Giwaku ☆☆☆ 火花バチバチ。
 WOWOWで松本清張の連続オンエアがあったのですがその時にみた1本。上質の舞台劇のようでありながら映画らしい時間の濃密さがあり、楽しむことができました。いや、筋自体を追うとそれほど推理物としてはよいプロットではないのです。しかし野村芳太郎の鮮やかな語り口、それを支える川又昂の映像設計と森田郷平のプロダクションデザイン。それが映画ならではの表現をうみだしているのです。ここでいう映画ならではの表現とはずばり省略と濃度の緩急です。この文法は演劇ともテレビとも違います。このあたりを実に巧みに操っているのは見事としか言いようがありません。桃井かおりは正直あまり評価していない女優さんなのですが、ここまではまれば拍手です。一方の岩下志麻の方はむしろ損な役回りにもかかわらずこれまた素晴らしい演技をみせており、2人の間で火花がバチバチしている様子を私たち観客は存分に楽しむことができます。そしてそれを存分に楽しめるのも演出の確かさなのです。
 野村芳太郎ってどんな監督? ときかれたら私はこの作品を代表作のひとつに推すでしょう。『砂の器』よりも彼の演出の腕が実感できるのはこれです。

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2011年7月13日 (水)

『96時間』

Taken ☆☆☆ 小気味よい娯楽作。
 ベッソンも関わっているヨーロッパコープの作品は、どこかVシネマっぽいテイストがあり、つまらなくはないんだけどすっごくおもしろいとはいえない作品がちらほらあり、あとは地雷原みたいな金太郎飴ゾーンなイメージですが、これはおもしろかったです。
 まず大柄でアクション映画のキャリアもありながら演技力も確かなリーアム・ニーソンを主役にしたこと。次に父と娘の絆を物語の推進力にしたこと。そして設定をシンプルにして展開をタイトにしたこと。これで作品の出来映えは最低保障されたようなものです。ニーソンは演技力も確かながら娯楽作もフィルモグラフィにずらりと並んでいます。これは彼が大柄でアクション映えすることも大きな要因だと思います。それでいてジェイソン・ステイサムやかつてのブロンソンのように、最初からすっごく強そうにはみえないのがよいのです。そして人質救出のリミットである96時間を上映時間93分に見せ場をかっちりと織り込みながら、垂れ流しに感じないのは評価したいと思います。
 とりあえず続編はやめましょう。客は入るかもしれませんが、かろうじて保ったこの最低保障の出来が貶められる可能性が高いです。でも『トランスポーター』のフランク・マーティンとのコラボだったらみたいかもしれません(爆)。

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2011年7月12日 (火)

『突撃隊』

Hellofh ☆☆ 最後まで楽しませるシーゲルの演出力。
 ドン・シーゲル監督、マックイーンにコバーン、そしてケビン・スペイシーが自伝を撮った歌手ボビー・ダーリンという顔合わせの戦争映画。WOWOWでオンエアされるまでまったく知りませんでした。とりたてて映画史などに残る映画ではないかも知れませんし、すっごくおもしろいとは思いませんでしたが、最後まで飽きずにみることができたのは、シーゲルの演出力でしょう。昔の作品はこういうレベルのものをきちんと撮っていたんだなあというのは再認識しました。

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2011年7月11日 (月)

『メモリー・キーパーの娘』

Memokd ☆1/2 ミニシリーズ向け素材を乱暴にダイジェスト。
 ときどきものすごく掘り出し物をひっぱってくるスターチャンネルの【オススメ!掘り出シネマ】。玉石混淆とはいえ、なかなかのあたりもあるので、毎月のオンエアを楽しみにしていますが、これもその中の1本でした。米国ではかなり売れた本らしく、日本でも邦訳は登場済。で、みたのですがこれはちょっとはずれの感じ。監督は『ボディガード』のミック・ジャクソン。この人は『L.A.ストーリー』のような佳作や、『ボルケーノ』のような職人芸で楽しめる作品などがあるのですが、これはだめでした。
 何を書いてもネタバレしそうなので。物語のきっかけはとある医師の決断。妻の生んだ双子の赤ん坊のうち一人がダウン症だったので内密に手放してしまいます。・・・興味をひきそうな展開でしょ?(汗) ところがドラマの焦点が妙な所を転々としてしまい、安っぽいプロットがダイジェストのように展開していきます。ダーモット・マローニーやエミリー・ワトソンのような達者な演技陣がいるにもかかわらず焼け石に水。ミニシリーズでやった方がよかった素材なように思いました。

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2011年7月10日 (日)

芸術家の姿に涙する

 とある日曜日。この日ちょっと朝早くおきてつけたNHKの「日曜美術館」に釘付けになってしまいました。この番組? もちろんいつもはみていません(汗)。せいぜい日曜日、子どもが就寝前の準備をしている時に偶然ついているぐらい(大汗)。
 今回は「記憶に辿りつく絵画 ~亡き人を描く画家~」というテーマで諏訪敦さんという画家をとりあげていました。彼は写実的手法で注目されている方のようで、もちろん私は知りませんでした。で、彼にきた依頼というのが「亡くなった娘を絵画で蘇らせて欲しい」というもの。突然の事故で娘を失った両親からのこの依頼に、ひとりの画家が苦悩しながら完成させていく様子を追っていたのですが、もう最後は涙、涙でした。それはご両親の姿にも涙だったのですが、できあがった画の素晴らしさにも、ここまで創作のために悶絶する芸術家の姿にも、深く心うたれたことでの涙でもありました。この画家のお名前、ぜひ覚えておきたいと思いました。

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2011年7月 9日 (土)

BD『トロン:オリジナル』×『トロン:レガシー』 ブルーレイ・セット

Bdtron 『トロン』と『トロン:レガシー』のBDセット。→review 帯に短し襷に長しな商品ラインアップで、『トロン』オリジナル版のBDが欲しい私のようなユーザーにはこれしか選択肢はなし。まずオリジナル版の方は日本でのDVDはひどい仕様だったが、ようやく米国盤で20周年記念仕様で出ていたものに追いついた。映像特典はすべて一緒だが、画質はさらによくなり大満足。他方『トロン・レガシー』の方は最新作らしく、文句のないクオリティ。画質は暗部が多い中ディティールもよく出ているし、音も情報量の多い音場で楽しませてくれる。なお画面アスペクトは『ダークナイト』のようにIMAXとスコープの混在。

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2011年7月 8日 (金)

『サマーウォーズ』

Summerw ☆☆1/2 テクノロジーと人とのふれあい方があまりにも紋切り型。
 『時をかける少女』の細田守監督の新作ということで期待していたのですが、これはいけません。つまらなかった。
前作が持っていた魅力はテクノロジーを斬新な表現方法で描きながら、そこに関わる人々の温もりをアニメーションで伝えたところにありました。しかし本作ではアバターたちが活躍する仮想世界の描き方に新しさはなく、誰も想像しえるものでしか画面に登場しません。その上、登場人物たちへの個性の与え方があまりにも紋切り型で、テクノロジーとの関わり方もその延長でしかないのです。なぜ最後が花札なのか、ただ単に古き日本の遊びの中で設定したにすぎなかったのか。これではあまりにもではないでしょうか。
 本作はデジモンのワンエピソードのセルフリメイクだと言われています。もしそうなのだとしたら次回作が勝負でしょう。演出家としての引き出しの多さは経験で変化しますが、とらえ方につながる懐の広さは本質的には変わりません。

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2011年7月 7日 (木)

『竜二』

Ryuuzi ☆☆☆ 金子正次の存在がすべて。
 おくればせながらようやく。ちょうど私が川崎に引っ越してきた1983年頃に「ぴあ」が推していたのがこれでした。本作の魅力は金子正次の存在がすべてでしょう。笠原和夫が「やくざのずるさは描いていない」という評はその通りだと思いますし、この映画の垢抜けしない泥臭さがうざったく感じる向きもあるはずです。しかし小市民としてのやくざである竜二の忸怩怩たる思いが金子正次自身とオーバーラップするのは唯市無比の本作の魅力ですし。作品が持つ力とはそういうものであってよいと思うのです。さらにこのタイプの奇跡は何度も起こせるはずもなく、その後低迷することが多い中で、夭折した映画俳優ゆえに、その魅力に永遠の輝きが与えられたといっても過言ではないでしょう。
 志のある作品です。そして気に満ちた作品です。スポットライトが当たったのは偶然かもしれませんが、そんな運命を引き寄せる力、そしてその輝きをずっと失わない力を持った作品であるのは間違いないでしょう。

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2011年7月 6日 (水)

『イベント・ホライゾン』

Eventhori_2 ☆☆1/2 ぶっとんだ内容で押し切るパワーが足りずもったいない。
 みた人の評価が真っ二つにわかれているので、どんなもんかと思ってましたが、これはよい意味でぶっとんだ内容でしたね。世界としては『ヘルレイザー』の宇宙版なのでしょうか。こういう話は嫌いではないですし、役者さんたちもきわめて的確なお芝居をみせてくれるので、そこそこ楽しめました。しかし映像でみせるセンスは今ひとつな上に、ぶっとんだ内容で押し切るパワーが足りずもったいないと感じました。特に残念だったのは美術デザインに個性がなかったこと。いかにも安っぽすぎでしょう。

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2011年7月 5日 (火)

HDエアチェック 今月のご注目!(2011/07)

備忘録もかねて私的なエアチェック対象を勝手にプッシュ。本当はもっとたっぷり録画しますが一応各局5本までと言うことで。

<WOWOW>
7/9 リトルトーキョー殺人課
全体的に注目作は少ないです。映画史的にはまったく価値はないかも知れませんが、噂のケイリー・ヒロユキ・タガワのタトゥーが見たい!(笑)

<スター・チャンネル>
7/6 深夜の告白
7/9 グレート・ディベーター 挑戦者たち
7/10 怒りの葡萄
7/11 フィールド・オブ・ドリームス
7/20 オーバー・ザ・トップ
今月は全然ないですねぇ。注目はデンゼル・ワシントンの監督2作目『グレート・ディベーター 挑戦者たち』。2007年に製作されたのに未公開で、DVDにもなってません。

<NHK BSプレミアム>
7/13 ネバー・クライ・ウルフ
7/24 異人たちとの夏
7/25 ベッドかざりとほうき
7/28 罠にかかったパパとママ
注目はディズニーのファミリー向け実写映画群。中でも『ネバー・クライ・ウルフ』には感涙もののオンエア。テロップがないように!

<日本映画専門チャンネル>
7/6 リング
7/6 らせん
7/7 リング2
リングシリーズ一挙オンエアはうれしい!

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2011年7月 4日 (月)

遊雀師トリをつとめる(浅草演芸ホール6月下席後半)

0703aab  しばらくブランクがあいていまして(それをまたこんな日に書くわけですが)。まあ映画もみたんだかみてないんだかといったところです。でもはりきってあしげく通ったのがありました。以前にも書きましたが、三遊亭遊雀師匠の落語です。
 浅草演芸ホールの先月6月下席後半で遊雀師匠は夜の部の主任(トリ)をつとめられました。気合い入れて2回足を運びました。私が書くまでもないのですが、トリをつとめるのは大変名誉なことです。しかも独演会と違って何のネタをかけるかは事前にはわかりません。遊雀師はすでに何度か寄席のトリをつめている実力者ですが、私が本格的にファンになってからは、その機会はなかなかなく、師匠が今トリをつとめられた時に何をかけるのか、とても楽しみだったのです。
 初日は「明烏」でした。堅物の若旦那が悪友にそそのかされて吉原デビューする話ですが、こんなに楽しかった「明烏」は初めてでした。もう1回足を運んだのは3日目。この日は「宿屋の仇討ち」。これも今まで師匠できいたこのネタの中では抜群のおもしろさで、やっぱり寄席はよいなあと実感できる一席でした。(ちなみに残りの3日間は「寝床」「くしゃみ講釈」「不動坊火焔」だったそうです)
 2008年に足を運んだ浅草演芸ホールで、その日出演されていた演者の中に遊雀師がいらっしゃいました。その「反対俥」のあまりのおもしろさに惚れ込んでしまい、私の落語熱に再び火が付いて現在に至るわけですが、本当に出会えたことに感謝をしています。
 ぜひぜひみなさんも寄席に足を運んでみてください。楽しくておだやかな時間が味わえると思います。

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2011年7月 3日 (日)

ポスターをチェンジ 11/07/03

 ときどき変えているシアタールームのポスター。シアターもめでたくこの6月で6周年。なのでさりげなくコレクションと呼ぶのはおこがましいものの、種類も増えてきました。で、6周年を記念して購入した2種類。

『ノートルダムの鐘』と『イントゥ・ザ・ワイルド』です。

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ポスターやパンフ販売の老舗、映通社で買ったのですが、ネット販売に慣れた身としては面倒に感じました。

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2011年7月 2日 (土)

BD: Superman: The Motion Picture Anthology (1978-2006)

Bdsuper  ワーナーの劇場版『スーパーマン』全5作を収録したBDボックス。日本でも8月にリリース予定だが定価で14800、実売1万円強とくれば、米国盤の出番。まったく同仕様で実売9000円というのはやっぱりお得感いっぱい。(UK盤はもっと安いらしいですが)。以前リリースされていたDVD盤の特典はすべて収録済み。それに新しい映像特典がつく。画質はマスターが新しくなっていない作品もあって、みんなピカピカの高画質とはいかないが、1とリターンズは画質はよい部類。また音も1はかなりよいと思う。
 なお余談だが今回は待ちきれずに配送にUPSを選択。そうしたら28日にオーダーで、30日に我が家に到着。びっくりです。ただし時間帯の指定はできないのが残念。

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2011年7月 1日 (金)

『SAYURI』

Sayuri ☆☆1/2 完全なるファンタジーとしてみればあり。でもセンスはなし。
 ロブ・マーシャルの『シカゴ』を酷評していた私。これを嫌いだった人は私の周囲には少数派で、オスカーまでとっちゃったんで、結構肩身が狭かったのですが、そのあとの作品がさんざんな出来映えで「ほらみてみろ!」と少しほっとしている私。この作品も何か笑ってしまう出来で、まあファンタジーとしての日本としてはありだと思うのですが、だから何だよという突っ込みではすまないセンスのなさが問題です。日本家屋を美しくとらえていない、踊りの所作や着物姿に美を感じない、結局センスがないのです。私が『シカゴ』を嫌いな理由に、ボブ・フォッシーが表現していた官能美がまったく感じられないことがあります。彼の『キャバレー』や『オール・ザット・ジャズ』と比較すると一目瞭然。センスはあるかないかしかありません。この作品もそれが一目でわかってしまうのです。

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