『モーターサイクル・ダイアリーズ』
☆☆☆ 清々しくさえある良質の青春映画。
正直みるかどうか迷っていたのですが、これはみてよかったです。チェ・ゲバラの物語は最低限のレベルでしか知らなかったのですが、『セントラル・ステーション』のウォルター・サレスが紡ぎ出したこのロード・ムービーは、そんな知識など必要としません。むしろそんな先入観は邪魔になり、やがてそれは深い余韻へと変化すると思います。特に前半部分が秀逸で、青春映画としての美しさが旅の楽しさの本質とともにうまく表現されていました。南米をとらえた撮影はどこかとぼけた味があり、後に『イントゥ・ザ・ワイルド』も担当するエリック・ゴーティエの冴えた手腕が発揮されています。残念ながら後半になると焦点がぼけてきた感じがして、そこまで成功していたアルベルトとエルネストとの描き分けが偏ってきてしまいました。それでもあのラスト。グスターボ・サンタオラヤの哀切たっぷりのメロディと共に夕焼け空を見つめるアルベルトの姿。いつまでも追いかけるしかない郷愁と、失われた友への哀惜とが混じり合ったあのラストはよいと思います。
良質な青春映画です。その誠実な描き方は清々しくさえあり、ゲバラという名前で避けるのはもったない1本です。
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