『トランスアメリカ』
☆☆1/2 ジェンダーから生まれる個人の尊厳。
テーマからしてどんな作品かなと不安もあったのですが、しっかりとした力作になっていました。性同一性障害を扱っていますが、ジェンダーはあくまで切り口にしたのは見事。「業」としての性を正面から捕らえており、さらには生まれや家族など生き方もっと普遍的なレベルで「生きるということは何か」「人としての尊厳とは何か」を描いている点は好感が持てます。出てくる人出てくる人みんなひと癖あるのですが、単純な価値観でみておらず、『ボーイズ・ドント・クライ』が陥ったようなステレオタイプな描写と違って、懐のひろさを感じます。ケビン・セガーズ演じるトビーの純粋さがフェリシティ・ハフマン演じる主人公と対になり、人の尊厳とは何かを私たちに問いかけてきます。ただしあまりにもエピソードがとっちらかっており、ひとつのドラマとしての完成度は低めです。フェリシティ・ハフマンは熱演ですが、正直この役はやはり男性がやるべきだったのではと思います。前述のとおり、ケビン・セガーズが好演でした。
軽い作品ではありませんが重すぎでもないはずです。同じようなテーマでも陳腐になってしまう日本のドラマとはひと味もふた味も違う魅力はある作品です。
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