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2011年5月17日 (火)

『レスラー』

Wrestler ☆☆☆1/2 染み渡る生き様。
 彼はスターで、ちやほやされていた時期があり、スキャンダルにまみれていました。(いや、好きな作品ありますよ。『エンゼルハート』とか、『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』とか)。そこから彼ははいあがった。そんな生き様がどうしても主人公のレスラーに重なります。人間としてダメなところがいっぱいあるけれど、観客である私たちが彼に感情移入してしまうのは、ミッキー・ロークだからです。この作品はミッキー・ロークでなければ成立しなかった作品でした。プロレスについての知識がある程度あった方が楽しめるのは事実ですが、それがなくても充分。むしろミッキー・ロークを知っているかどうかが大きなポイントかも知れません。ダーレン・アロノフスキーの演出はきわめて正攻法。インディーズらしいシンプルさが効果的です。演技陣ではミッキー・ロークもさることながら、マリサ・トメイも心優しい女性を好演。それ以外の脇役陣も実にいい表情をしている役者さんがそろっており、キャスティングの見事さが光ります。そしてそんな人々の生き様が胸に染み渡ります。
 アーティストが私たちの胸をうつ作品を残すのはそこにその人の生き様が滲むから。私はそう思っています。人々を楽しませるために、人々を涙させるために心身を削るような努力をしているアーティストのものは売れるかどうかは別としての輝きがあります。ミッキー・ロークの輝きは、またいつの日か終わるかもしれませんが、この作品で彼がみせた輝きは、彼が人生を賭して積み重ねてきたものからしか生まれ得なかった輝きであり、私たち映画ファンは一生忘れることのない輝きです。

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