『ミュージック・イン・ザ・ハート』
☆☆☆ 障害者の自立をあたたかく見つめた佳作。
スターチャンネルでオンエアされていた作品。アメリカで障害者差別を禁止する法律の成立に尽力した活動家リチャード・ピメンテルの半生を描いた作品です。これがすごくよかった。大傑作ではないかもしれないけれど、でもみることができてすごくよかった作品でした。
まず彼の生い立ちがおもしろい。実話ならではとはいえ、寓話的な側面があって、世界観の構築に絶妙なスパイスとなっています。彼自身の人生も大変興味深いもので、おそらくこのあたりは脚本の妙でもあるでしょう。こういう題材の場合、どこまでひとつのエピソードを掘り下げるかという面が難しいのですが、この作品についてはこのさじ加減で絶妙だと思います。ダイジェストのような駆け足感はありませんし、余韻の残し方がうまい。中でもレストランをめぐるエピソードにはぐっと来ました。興味を持つ人はもっと知りたいと興味をかき立てられる入り口になっています。
また私はこの手の題材にはかなり厳しい視点を持っています。この作品のよいところは背伸びをしていないところ。障害者の自立という問題にきちんと向き合っていながら、人が生きていく時に誰もが直面する出来事を描いているので、同じように共感でき、今まで気がつかなかった視点にはっとさせられるのです。そして自立とはどういうことなのかを私たちは考えさせられるのです。役者陣の中ではマイケル・シーンを特筆しておきます。この人の他の作品では正直、何がそんなに評価されるのだろうと疑問視していましたが、この作品の彼は素晴らしい。『マイ・レフトフット』のダニエル・デイ・ルイスより何百倍も素晴らしい。障害者という人間をきちんと演じていることに感謝の気持ちでいっぱいです。
この伝記ドラマ。なんとまだソフト化されていません。誠実であたたかな視点を持つこの佳作に、数多くの人が心揺さぶられることを願ってやみません。
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