『エド・ウッド』
☆☆1/2 結局この人は人間が描けない。
私ととにかく相性の悪いティム・バートン。確かに本作はその中でもまだ楽しめた部類だと思うのですが、結局この人は人間が描けないと言うことにつきるのでしょう。
彼がその有り余る情熱を映画作りにぶつけていることはわかります。しかしその情熱も含めてエド・ウッドがどんな人間だったかがよくわからないのです。ゆえにエド・ウッドがなぜ「駄作」を生みだしたのかがよくわからないし、エド・ウッドが駄作を生み出しても愛さずにはいられない、という状況もよく理解できません。ティム・バートンはクリエイターとしての自らを重ねた部分があるのでしょうが、そのあたりは観客の私たちには伝わってきません。反面エド・ウッドが憧れる往年の大スター、ベラ・ルゴシとのエピソードは、演じるマーティン・ランドーの名演もあって、グッっとくるものがあります。でもそれはルゴシの生涯を別なルートで知識として知っているからであって、この映画の描き方だけではよくわからなかったと思います。そういう意味では皮肉ですらあります。
相変わらず珍妙なキャラクターを並べ、それだけで風変わりな味を出そうとしているのかもしれませんが、彼に欠けているものは人間本来が持つ奇妙さであって、そこが抜けているゆえに普遍性を持ちません。つまらない映画ではありませんし、ベラ・ルゴシを知って欲しいという意味では多くの人にみてもらいたいのですが、そのあたりは残念です。
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