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2011年1月28日 (金)

『扉をたたく人』

Visitor ☆☆1/2 大切な人を失う闇の深さは出ている。
 この作品はインディペンデント系の作品ですが、そんなポスト9.11の米国社会を背景に味のある小品となっていました。
 妻に先立たれた教授というキャラクターについてはちょっとした描写が上手に積み重ねられていてしっかりと描かれています。そして物語の鍵を握るシリア人とセネガル人のカップルとの心の交流は、微妙な距離感からスタートしてそれが縮まっていく様を主人公の変化として描いています。何よりその奥に大切な人を失ってしまう闇の深さが絶妙に提示されることで、物語に普遍性が増し、教授の行動に偽善を感じなかったのでしょう。反面カップルの方の描き方はやや通り一遍で物足りなさがありました。そのあたりのバランスが悪く、演出家の手腕がもうひとつあればなあと思ってしまいます。
 この作品は何よりリチャード・ジェンキンスの好演が支えているといってよいでしょう。彼の何気ない仕草が、そのキャラクターと物語を雄弁に語るのです。あのラストシーンにどこか爽やかなものさえ感じさせてくれたのは、彼が深い悲しみという闇から生きる希望を見いだしているからに他なりません。
 わかりやすいお涙頂戴物ではありません。しかし教授の悲しみを共有できた人は最後に彼と同じように小さな希望、そして前に進む力をくれる作品です。

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