『リリイ・シュシュのすべて』
☆☆☆ すごいものをみた気はするが、はったりだけのような気もする。
これ、みるのを避けてました。公開当時はかなり賛否両論に分かれた記憶がありますが、なるほど、確かにこれは問題作です。大きくわけると評価が分かれるポイントは3つ。まずその文字入力をしているような演出表現。映画はテキストという表現がもっとも似合わないものだと考えていますので(おそらく数少ない成功例が『大統領の陰謀』のラスト)これは逆効果です。それからソニーのHD24PカメラであるCineAltaのHDW-F900による撮影ですが、これはよかった。決して色調は寒色ではないのに肌触りの冷たいこの映画独特なルックスを獲得した大きな要因となっていたのではないでしょうか(それにしてもこの天才篠田昇さんを失うという大きさ、あらためて実感します) で、3つめはそのストーリー。思春期の純粋さと残酷さは、過激になるほど普遍性を獲得しにくくなるのではないでしょうか。私は逆に嘘くさく感じてしまいました。もっと彼らは良くも悪くも賢い気がします。いつも後味の悪い映画を撮るラース・フォン・トリアー監督の映画群とはどこか違う気がするのです。彼は基本的にそこからぶれていない。岩井監督は基本は性善説でこの映画の時にはただ単に何かに絶望し怒っているだけのような気がしてならないのです。
岩井俊二監督作品をみたのは久しぶりでした。なんかすごいものをみた気はするのですが、だからといってこれは傑作かと聞かれると、私は「ちょっと違うなあ」と思います。岩井俊二が勝負するフィールドは、見かけや流行ではなく、もっとヴィヴィッドな世界のはず。アメリカ資本の次回作はどうなるのでしょうか?
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント