『インビクタス / 負けざる者たち』
☆☆☆ 余白の残し方に感じる名人芸。
イーストウッドがマンデラ大統領を映画に? いや、真相はモーガン・フリーマンの持ち込み企画のようですが、それでもさすがの腕前、見応えのある作品となっていました。
本来マンデラ大統領と南アフリカのラグビー代表チームのドラマは並列にはなりません。それをやってのけてしまうところが素晴らしい。一歩間違うとただの再現ドラマとなるところですが、ダイジェストに感じないのは、ひとつひとつの場面を丁寧に描いているからです。そしてあえて深く掘り下げることはせず、無駄は極力までそぎ落としたことで、観客に想像させるだけの余白を残すのです。だから印象に残る場面が数多くあります。大統領警護メンバーがラグビーをするところや乗車の顔ぶれの変化(前半は人種別、後半はごちゃ混ぜ)、少年と警官が決勝戦のラジオ実況に聞き入るシーン、代表チームが黒人地区の子どもたちにラグビーを教えるシーン・・・。何よりあのラストのマンデラのクローズアップに、前途多難な南アフリカの未来に勇気を持って歩こうとしている姿が思い起こされるのです。
モーガン・フリーマンはさすがの貫禄で、ネルソン・マンデラ直々のリクエストに応える演技をみせます。そしてマット・デイモンも手堅い演技で、ラガーマンとしてのリアリティを出しています。『ミリオンダラー・ベイビー』や『グラン・トリノ』と比べると一枚落ちるのは否めませんが、それでも秀作の格をそなえた力作です。
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