『フロスト×ニクソン』
☆☆☆ 言葉の虚構、イメージの虚構。
ロン・ハワードが戯曲を映画化したこの作品。これは真実と虚構についての一考察として、映画としての特性も加わった秀作となっていました。
大統領としてのリチャード・ニクソンについてはウォーターゲート事件や、ケネディとの公開討論など、さまざまなエピソードを我々は知っています。しかしそれはあくまでもパブリックイメージを増幅するだけに過ぎず、ニクソン本人も本当の自分ではないことを必死に伝えようとします。その虚構を暴こうとするフロスト自身も、また言葉でしかそれを行うことが出来ず、その言葉自身が持つ虚構に負けていく様子がにじみでてきます。このインタビューには結局勝者が存在せず、私たちは結局虚構の中でしか生きることができない寂しさが心をうちます。
フランク・ランジェラはジョン・バダムの『ドラキュラ』からその眼力がずっと心に残る役者さんでしたが、この作品のニクソン役も素晴らしい演技をみせてくれます。あまり外見上はニクソンに似ているとはいえませんが、この作品をみていると彼以外には思い浮かびません。フロストを演じるマイケル・シーンは損な役回りですが手堅く演じています。
日本ではピンとこない題材かも知れませんが一見の価値はある作品です。
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