『愛を読むひと』
☆☆1/2 官能と残酷の表裏一体の危うさを吹き飛ばした後半の駆け足。
『めぐりあう時間たち』のスティーヴン・ダルドリーの新作ということで期待していましたが、やや消化不良の感があるできばえとなっていました。
前半はとてもよく、少年がめぐりあう女性との時間の儚さが、戦犯を裁く法廷での再会で、よい具合に苦みへと転化して、物語の起・承へとつながっていきます。そしてその場に立つ人が自分にとって忘れ得ぬ女性ゆえに、人ごとにはできないというジレンマを抱えることになります。しかし後半一気に失速。原作は未読なのでストーリーがどう処理されているかについては何とも言えないのですが、これでは時代に翻弄された1人の女性と、その女性との関わりの中で人生に惑う1人の男性との物語がかみ合っているとは思えず、レイフ・ファインズが演じる現在の主人公が回想する場面が映画としての流れを寸断し、主人公がなぜそういう決断をしたのかにまったく説得力が生まれません。
役者陣の演技もよく、撮影や美術なども一級品の仕事。そして題材も素晴らしいだけに、少しもったいない出来映えです。
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