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2010年5月 6日 (木)

『僕らのミライへ逆回転』

Bekind ☆☆☆ 映画はみんなのものだ。
 2009年の山形ドキュメンタリー映画祭で上映されたアメリカのドキュメンタリー映画『RiP! リミックス宣言』(2008)を柳下毅一郎さんがブログで語っていました(余談ですがこのブログに金子修介監督がコメントしています。すんごくおもしろいやりとりです)。この作品は後日NHKでもオンエアされましたが、とても興味深いテーマを問いかけていました。著作物としての映画は誰の物なのかという議論もさることながら、このドキュメンタリーは「引用はどこまで許されるのか」について一石を投じた内容だったのです。つまり私たちの著作物は大なり小なり過去の文化の影響を受けている、しかし現代のようにすべての表現に著作権が認められてしまうことは、私たちの表現を規制している、つまり企業の既得権益の保護にしかならないのではというドキュメントだったのです。このテーマでは私もいろいろ言いたいことはあるのですが、本筋からズレますので。この映画にそういう小難しい話は出てきませんが、「みんなを楽しませたい」という初期衝動による映画作りの楽しさがあふれています。つまり自分たちが作った物を大きく映して、そしてみんなで楽しもうという気持ちが。
 正直思ったほどパロディはおもしろくなかったし、ファッツ・ウォーラーをめぐるエピソードも不要だったと思います。また確かにこの映画がとりあげたスウェーデン版はまずいのかもしれません。でも私は言い切ってしまいたい。『ニュー・シネマ・パラダイス』(私はこの映画が大嫌い)などより、この作品の方がはるかに映画への愛に満ちあふれているということを。あの最後の上映会の至福は、映画の楽しさがどこにあるかをちゃんとわかっている人たちがここに関わっていることを示し、それだけでもこの映画は偉いと思うのです。

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