訃報:北林谷栄
女優の北林谷栄さんが、4/27に肺炎のため亡くなりました。享年98才。
1911年東京都銀座生まれ。1931年に創作座の研究生となり、1936年には新協劇団へ。築地小劇場の『どん底』で初舞台を踏みます。1947年、宇野重吉や滝沢修らと民衆芸術劇場を設立。1950年には劇団民藝創立に加わりました。若い頃から老女を演じることが多かったのですが、きっかけとなったのは1942年。30歳のときの舞台「左義長まつり」で、むさ苦しい衣装を着たり、前歯を取ったり、はいつくばって歩くなどの役作りをしたことだったそうです。
映画にも代表作が多く、1956年と1985年に製作された市川崑監督『ビルマの竪琴』では、両作品とも物売りの老婆役で出演。同じ役どころで出演したのは珍しケースで話題になりました。また『となりのトトロ』のおばあちゃん役では声優にも挑戦しています。映画での遺作は『黄泉がえり』(2003)。
私が強く印象に残っているのは前記の『ビルマの竪琴』もそうですが後年の代表作となった岡本喜八監督の『大誘拐』(1990)。これで数々の映画賞を受賞しますが、びっくりしたのが現在はかなり知名度が上がってきた東京スポーツ映画賞でのできごと。この賞はビートたけしが東スポ紙上の企画としてスタートしていて、最初の内はほんのネタのひとつでしかないレベルだった。で、あろうことかたけしは北林さんに「新人賞」をあげたのです。まあ、これだけでもジョークなわけです。で、授賞式も今みたいな形ではなく、当時オンエア中だった「北野ファンクラブ」での収録をかねてでしたが、なんとそこに北林さんが参加。放送をみて私も大笑いしながら、北林さんの懐の深さと凛とした姿勢が、作品と共に強く印象に残りました。
ご冥福をお祈りします。
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