『雨月物語』
☆☆☆ 幽玄と人間の業の怪しい交わり方。
これまたみたことのなかった日本映画の名匠、溝口健二の名作にして、カメラマン宮川一夫の映像美ももはや伝説となっている1本。もう言葉がありません。これは日本映画でしか作ることのできない世界です。ワンシーンワンカットのお芝居の作り方の素晴らしさ、そこまで徹底的に作り込んでいる世界からは、人がしっかりと浮かび上がってきます。ゆえにそれをとりまく人々の思いがうごめき、幽玄と業がからみあう世界が創出されているのです。なぜそれがワンカットでできるというアクロバチックなカメラワークもなのですが(森雅之がが妻子の元に帰ってくるシーン)、それ以上にお芝居の切り取り方にひたすら感心。中でも小沢栄太郎が勲功成って宴に興じている時に、身を落とした妻に再会する場面は、宮川一夫のキャメラがあってこその場面だと言えます。
名匠の職人芸で語られる幽玄美あふれる絵巻物。さすがです。
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