『4ヶ月、3週と2日』
☆☆☆ 命の責任、大人の無責任。
ふりかえってみると滅多にみる機会がなかったルーマニアの作品。しかしカンヌでパルムドールを獲得しただけのことはある骨太な力作でした。
この映画にはさまざまな要素が絡み合っており、見終えた後に残るこの感覚は言葉では表しにくいものです。しかしチャウシェスク政権末期を舞台にした物語は、堕胎シーンもさることながら、さりげないセリフにもギョっとさせられるところが多く、単純に命の責任だけではわりきれない大人の無責任の姿には複雑な心境になります。閉塞的な政治状況下であぶり出される人間の暗い側面を描きつつも、「なんかわかるぞ、それ」という観客の共感も得られる微妙なラインを上手に残しており、このあたりは高く評価してよいでしょう。しかしみるには勇気が必要かもしれませんし、再見するにも覚悟がいるタイプの作品です。
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