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2010年1月23日 (土)

『レボリューショナリー・ロード』

Revo ☆☆☆1/2 圧倒的な心情表現力。
 新興住宅地に住む家族の悲劇という部分は過去さまざまな作品が取り上げてきましたが、ここまで正面きって・・・という作品はなかったかも知れません。
 サム・メンデス監督は過去にも『アメリカン・ビューティー』のような作品がありましたが、あれやティム・バートンの切り口は表層上の違和感を皮肉な笑いに転化し、内面はあぶりだしたもの。しかしここでは登場人物の行動をただ並べて、そこから圧倒的な絶望を浮かび上がらせたもの。現実を知ることで理想主義が崩壊していく中、人生に何を求めて生きていくのかという、人々が永遠に抱える命題を観客に突きつけます。マイケル・シャノンがわずかな場面での出演にもかかわらずオスカーの助演男優賞にノミネーションされたのも彼の役柄が、多様な価値観を受け入れられない呪縛を象徴しているからでしょう。
 レオナルド・ディカプリオは損な役回りにもかかわらず、若き夫役を好演。ケイト・ウィンスレットも見事な演技をみせてくれます。しかし強烈な印象を残すのは助演陣で、マイケル・シャノン、そしてキャシー・ベイツです。ゆえにあのラスト、キャシー・ベイツ演じる妻のぼやきへの、夫の諦観ぶりが私たちの心を鋭く突き刺します。
 演出と演技の両輪で登場人物の心情が圧倒的な表現力を得ているという意味でも必見の作品です。そうそう、これをみて最初に思い出したのがキューブリックの『シャイニング』でした。あの作品は超常現象を取り扱いながら、実は閉塞した人間関係を描いているという側面があります。そういう意味でこの作品もホラーや怪談に近いテイストかもしれません。

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