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2010年1月31日 (日)

映画芸術2009年日本映画ベストテン&ワーストテン

恒例「映画芸術」誌の2009年度日本映画ベストテン&ワーストテン。毎回笑わせていただきます。相変わらず嫌われている是枝監督なわけですが、いわゆる異業種監督はとことん毛嫌いするのも、らしいといえばらしいですね。

ベストテン
1:愛のむきだし(園 子温監督)
2:ウルトラミラクルラブストーリー(横浜聡子監督)
3:ヴィヨンの妻 桜桃とタンポポ(根岸吉太郎監督)
4:あんにょん由美香(松江哲明監督)
5:私は猫ストーカー(鈴木卓爾監督)
6:SR サイタマノラッパー(入江 悠監督)
6:ドキュメンタリー頭脳警察(瀬々敬久監督)
8:大阪ハムレット(光石富士朗監督)
8:余命1ヶ月の花嫁(廣木隆一監督)
10:のんちゃんのり弁(緒方 明監督)

ワーストテン
1:空気人形(是枝裕和監督)
2:蟹工船(SABU監督)
3:ROOKIES―卒業―(平川雄一朗監督)
4:しんぼる(松本人志監督)
5:MW―ムウ―(岩本仁志監督)
6:笑う警官(角川春樹監督)
7:ハルフウェイ(北川悦吏子監督)
8:さまよう刃(益子昌一監督)
9:カムイ外伝(崔 洋一監督)
10:ガマの油(役所広司監督)
10:ゼロの焦点(犬童一心監督)
10:ディア・ドクター(西川美和監督)

過去の結果
2009年

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2010年1月30日 (土)

第64回毎日映画コンクール

第64回毎日映画コンクールの結果。今年から授賞式がミューザ川崎でやるんですよね。地元市民としては感慨深いものがあります。

<作品部門>
日本映画大賞『沈まぬ太陽』(若松節朗監督作品)
日本映画優秀賞『劔岳 点の記』(木村大作監督作品)
外国映画ベストワン賞『グラン・トリノ』(クリント・イーストウッド監督作品)
男優主演賞:松山 ケンイチ『ウルトラミラクルラブストーリー』
女優主演賞:小西 真奈美『のんちゃんのり弁』
男優助演賞:岸部 一徳『大阪ハムレット』
女優助演賞:八千草 薫『ディア・ドクター』
スポニチグランプリ新人賞:西島 隆弘『愛のむきだし』
スポニチグランプリ新人賞:満島 ひかり『愛のむきだし』
田中絹代賞:高橋 惠子
監督賞:園 子温『愛のむきだし』
脚本賞:田中 陽造『ヴィヨンの妻 ~桜桃とタンポポ~』
撮影賞:木村 大作『劔岳 点の記』
美術賞:種田 陽平/矢内 京子『ヴィヨンの妻 ~桜桃とタンポポ~』
音楽賞:蓮実 重臣『私は猫ストーカー』
録音賞:石寺 健一『劔岳 点の記』
技術賞:該当なし
アニメーション映画賞『サマーウォーズ』(細田守監督作品)
大藤信郎賞『電信柱エレミの恋』(中田秀人監督作品、立体アニメ表現の完成度に対して)
ドキュメンタリー映画賞 『あんにょん由美香』(松江哲明監督作品)
<TSUTAYA映画ファン賞>
日本映画部門『ROOKIES -卒業-』(平川雄一朗監督作品)
外国映画部門『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』(ケニー・オルテガ監督作品)
<特別賞>
特別賞:故・森繁 久彌(俳優)
特別賞:故・水の江 瀧子(女優・映画プロデューサー)

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2010年1月29日 (金)

『アバター』が(とりあえず)興収記録達成。

 ついに『アバター』が全世界歴代興行収入記録を抜いたというリリースがFOXから出ていました。しかーし。まあ、とりあえず落ち着いていきましょう。まず北米興収はまだ記録更新はされていません。そう、まだです。現在のところは『ダークナイト』を抜いて歴代2位。まあキャメロン監督作品で1位、2位独占というだけでも充分すごいですが。今のアベレージでいくとあと3週間ぐらいで『タイタニック』の持つ6億ドルを抜き去ることは可能でしょう。つぎに日本市場ですが、これは難しいでしょう。まず現在のところ興収50億円は越えたそうですが、『千と千尋の神隠し』が持っている300億円にはまだまだ手が届きそうにありません。おそらく洋画トップの『タイタニック』(260億)も難しいと思います。最大のポイントはどこまでロングランができて、パイがひろがり、リピーターがあらわれるかなのですが、前者については多分GWまでが限界かと思いますし、後者2つについてはそれほどいないというのが実情です。『タイタニック』にはディカプリオがいて、ラブロマンスがあって、泣けるという女性観客を呼び込む要素がありました。私の見立てでは興収120億円というのがラインだと思います。ひょっとすると『アバター』が成功はするけれど歴史的な興行にならないという結果に日本はなるかもしれません。

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2010年1月28日 (木)

LA映画批評家協会のゼロ年代映画トップ10

 『映画秘宝』やギッチョさん運営のサイト『破壊屋』『まどぎわ通信』さんなどでもやっているゼロ年代映画トップ10。私もやろうと思ってますが、かなり悩んでいます。2月はじめには書こうと思っていますが、さすがに10本は苦しいですね。とりあえずそんなトップ10ということで、LA映画批評家協会選定のゼロ年代映画トップテン。

1.『マルホランド・ドライブ』
2.『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』
3.『エターナル・サンシャイン』
4.『ブロークバック・マウンテン』
5.『ノーカントリー』&『ゾディアック』
6.『ヤンヤン 夏の想い出』
7.『4ヶ月、3週と2日』&『ロード・オブ・ザ・リング』
8.『千と千尋の神隠し』
9.『ユナイテッド93』&『天国の口、終りの楽園。』
10.『サイドウェイ』

なんだよ、10本以上あるじゃんか!(怒)

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2010年1月27日 (水)

第67回ゴールデン・グローブ賞受賞結果一覧

 第67回ゴールデン・グローブ賞の結果です。いつもノミネート一覧を書いていたのですが間に合わなかったので一緒に書きます。◎が受賞作です。(D=ドラマ C/M=コメディ/ミュージカル)

【作品賞D】
◎『アバター』
 『ハート・ロッカー』
 『イングロリアス・バスターズ』
 『プレシャス』
 『マイレージ、マイライフ』

【作品賞C/M】
◎『ハングオーバー』
 『(500)日のサマー』
 『恋するベーカリー』
 『ジュリー&ジュリア』
 『NINE』

【主演男優賞D】
◎ジェフ・ブリッジス  "Crazy Heart"
 ジョージ・クルーニー  『マイレージ、マイライフ』
 コリン・ファース  "A SINGLE MAN"
 モーガン・フリーマン  『インビクタス/負けざる者たち』
 トビー・マグワイア  『マイ・ブラザー』

【主演女優賞D】
◎サンドラ・ブロック  『しあわせの隠れ場所』
 エミリー・ブラント  『ヴィクトリア女王 世紀の愛』
 ヘレン・ミレン  "The Last Station"
 キャリー・マリガン  『17歳の肖像』
 ガボレイ・シディビー  『プレシャス』

【主演男優賞C/M】
◎ロバート・ダウニー・Jr  『シャーロック・ホームズ』
 マット・デイモン  『インフォーマント!』
 ダニエル・デイ=ルイス  『NINE』
 ジョセフ・ゴードン=レヴィット  『(500)日のサマー』
 マイケル・スタールバーグ  "A SERIOUS MAN"

【主演女優賞C/M】
◎メリル・ストリープ  『ジュリー&ジュリア』
 サンドラ・ブロック  『あなたは私の婿になる』
 マリオン・コティヤール  『NINE』
 ジュリア・ロバーツ  『デュプリシティ ~スパイは、スパイに嘘をつく~』
 メリル・ストリープ  『恋するベーカリー』

【助演男優賞】
◎クリストフ・ヴァルツ  『イングロリアス・バスターズ』
 マット・デイモン  『インビクタス/負けざる者たち』
 ウディ・ハレルソン  "The Messenger"
 クリストファー・プラマー  "The Last Station"
 スタンリー・トゥッチ  『ラブリーボーン』

【助演女優賞】
◎モニーク『プレシャス』
 ペネロペ・クルス  『NINE』
 ヴェラ・ファミーガ  『マイレージ、マイライフ』
 アナ・ケンドリック  『マイレージ、マイライフ』
 ジュリアン・ムーア  "A SINGLE MAN"

【監督賞】
◎ジェームズ・キャメロン   『アバター』
 キャスリン・ビグロー  『ハート・ロッカー』
 クリント・イーストウッド  『インビクタス/負けざる者たち』
 ジェイソン・ライトマン  『マイレージ、マイライフ』
 クエンティン・タランティーノ  『イングロリアス・バスターズ』

【脚本賞】
◎『マイレージ、マイライフ』
 『第9地区』
 『ハート・ロッカー』
 『イングロリアス・バスターズ』
 『恋するベーカリー』

【歌曲賞】
◎『Crazy Heart』
 『アバター』
 『マイ・ブラザー』
 『Everybody's Fine』
 『NINE』

【音楽賞】
◎『カールじいさんの空飛ぶ家』
 『かいじゅうたちのいるところ』
 『アバター』
 『インフォーマント!』
 『ア・シングル・マン(原題)』

【アニメ作品賞】
◎『カールじいさんの空飛ぶ家』
 『くもりときどきミートボール』
 『コララインとボタンの魔女 3D』
 "Fantastic Mr. Fox"
 『プリンセスと魔法のキス』

【外国語映画賞】
◎"The White Ribbon"
 『抱擁のかけら』
 "Baaria"
 "La nana"
 "A Prophet"

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2010年1月26日 (火)

アメリカ議会図書館の新規登録

 アメリカ議会図書館にフィルムが永久保存されるアメリカ国立フィルム登録簿(National Film Registry)。公開から10年以上経った「文化的、歴史的、芸術的」に重要な映画(短編含む)を1989年から毎年25作品追加されて、昨年までにちょうど500本近くになっています。2009年末にまた増えたのですが、注目は何といってもマイケル・ジャクソンのプロモーションビデオ『スリラー』が登録されたことでしょう。制度開設以来こういったプロモーションビデオが登録されるのはもちろん初めてのこと。もちろんすごい作品ではあるのですが、なんかこれよりも先に保存すべき作品はあるような気もします。マイケル・ジャクソンの死と、そのパフォーマンスの再評価という意味も大きいでしょう。

2009年に加わった25作品は以下の通り。(原題アルファベット順)
『狼たちの午後』Dog Day Afternoon(1975)
The Exiles (1961)
Heroes All (1920)
Hot Dogs for Gauguin (1972)
『縮みゆく人間』 The Incredible Shrinking Man (1957)
『黒蘭の女』Jezebel (1938)
The Jungle (1967)
『鉛の靴』 The Lead Shoes (1949)
『リトル・ニモ』 Little Nemo (1911)
Mabel’s Blunder (1914)
『怪傑ゾロ』 The Mark of Zorro (1940)
『ミニヴァー夫人』Mrs. Miniver (1942)
『マペットの夢みるハリウッド』The Muppet Movie (1979)
『ウエスタン』 Once Upon a Time in the West (1968)
『夜を楽しく』Pillow Talk (1959)
Precious Images (1986)
Quasi at the Quackadero (1975)
The Red Book (1994)
The Revenge of Pancho Villa (1930-36)
Scratch and Crow (1995)
『野性愛』Stark Love (1927)
『G・I・ジョー』The Story of G.I. Joe (1945)
A Study in Reds (1932)
『スリラー』Thriller (1983)
『西部の星空の下で』Under Western Stars (1938)

もっと知りたい方はこちらを
Library of Congress >National Film Registry

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2010年1月25日 (月)

CD「炎の少女チャーリー」O.S.T.

Cdfires  やっと手に入れました! タンジェリン・ドリームが担当したスコア。映画はへっぽこですが、音楽はシンセサイザーのよさが出ていて、いかにも彼ららしい作品になっています。ちなみに私のタンジェリン・ドリーム担当映画音楽ベスト3は『恐怖の報酬』『卒業白書』『ミラクル・マイル』。

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2010年1月24日 (日)

『ブロードウェイ・ブロードウェイ コーラスラインにかける夢』

Elp ☆☆☆ 必ず『コーラスライン』をみてから。
 『コーラスライン』はかつてブロードウェイでの公演ロングラン記録を保持していたことがあるほどの大ヒットミュージカル。その作品を再演するにあたってキャスティングのためのオーディションが行われたわけですが、この作品はその舞台裏を追ったドキュメントです。
 まず大前提として『コーラスライン』をみていることが必要です。私は映画版、ステージと両方みていますが、そうすることでスタッフが求めているキャスト像を頭に入れながら、みている人も「そうそう」とか「何か違う気がする」を共有することができます。それから『コーラスライン』が持っていた無名の若者たちが成功を夢見てわずかな可能性にかける厳しさと尊さが、こちらの世界にも二重にだぶるという側面も感じられるようになります。ただそれゆえに普遍性は失われ、厳しくても夢を見る若者の青春の輝きを描くという点で物足りなさが残ったことは否めません。
 でも私はこの作品が好きです。何よりこの作品に登場したダンサーたちを心から応援したい気持ちになりました。それでこのドキュメンタリーの持つ魅力がわかっていただけるのではないでしょうか。

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2010年1月23日 (土)

『レボリューショナリー・ロード』

Revo ☆☆☆1/2 圧倒的な心情表現力。
 新興住宅地に住む家族の悲劇という部分は過去さまざまな作品が取り上げてきましたが、ここまで正面きって・・・という作品はなかったかも知れません。
 サム・メンデス監督は過去にも『アメリカン・ビューティー』のような作品がありましたが、あれやティム・バートンの切り口は表層上の違和感を皮肉な笑いに転化し、内面はあぶりだしたもの。しかしここでは登場人物の行動をただ並べて、そこから圧倒的な絶望を浮かび上がらせたもの。現実を知ることで理想主義が崩壊していく中、人生に何を求めて生きていくのかという、人々が永遠に抱える命題を観客に突きつけます。マイケル・シャノンがわずかな場面での出演にもかかわらずオスカーの助演男優賞にノミネーションされたのも彼の役柄が、多様な価値観を受け入れられない呪縛を象徴しているからでしょう。
 レオナルド・ディカプリオは損な役回りにもかかわらず、若き夫役を好演。ケイト・ウィンスレットも見事な演技をみせてくれます。しかし強烈な印象を残すのは助演陣で、マイケル・シャノン、そしてキャシー・ベイツです。ゆえにあのラスト、キャシー・ベイツ演じる妻のぼやきへの、夫の諦観ぶりが私たちの心を鋭く突き刺します。
 演出と演技の両輪で登場人物の心情が圧倒的な表現力を得ているという意味でも必見の作品です。そうそう、これをみて最初に思い出したのがキューブリックの『シャイニング』でした。あの作品は超常現象を取り扱いながら、実は閉塞した人間関係を描いているという側面があります。そういう意味でこの作品もホラーや怪談に近いテイストかもしれません。

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2010年1月22日 (金)

『チャイナタウン』

Chinatown ☆☆ 何かおかしいという違和感。
 かろうじて『戦場のピアニスト』が、という感じで私には苦手な作品ばかりのロマン・ポランスキー。この作品も時代の空気までも再現するような映像が展開されますが、どこかハードボイルド物としては何かおかしいという違和感がぬぐえませんでした。フェイ・ダナウェイだけはのりにのっていた時期だけあって圧倒するオーラが出ているのですが、ジャック・ニコルソン演じる探偵ジェイクもハマリ役とは思えず、ジョン・ヒューストンにいたっては「はあ?」という感じ。好きな人には好きな世界かと思うのですが、私にはあいませんでした。

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2010年1月21日 (木)

『ベガスの恋に勝つルール』

Whivega ☆1/2 飽きたよ、もう。
 キャメロン・ディアズとアシュトン・カッチャー共演のラブコメディと言うことでまーったく期待していなかったのですが、年末年始休暇の大掃除をしながら、ながらみをしてしまいました。まあ、その程度で鑑賞できる内容でした(汗)。最初の乱痴気騒ぎからすべて想定の範疇に収まってしまい、その後もストーリーにはまったくひねりがありません。そしてそれが王道を行く安心感というよりは、もう飽きたよといううんざりになってしまいます。キャメロン・ディアズにラブコメというのはすでに出尽くした感もあり、アシュトン・カッチャーのダメ男というのも今さらという感じなのです(その上、脇役にまで魅力がない)。
 というわけでどうしてもこの2人の組み合わせでみたいという方はどうぞ。

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2010年1月20日 (水)

この世界の片隅に(中)(下)

Kono2 Kono3  相変わらず物語の中盤の構成が抜群にうまい。何気ない日常の描写が繊細で、ひとつひとつが登場人物をいきいきとさせている。そして下巻。何度も胸が詰まった。戦時下で生きるということはどういうことか、そしてそれは今でも変わらぬ日々を生きるということであり、そこに不条理な不幸がやってくるということであり、死と隣りあわせである恐怖を心の中に抱えるということである。作者が勇気を持って戦時下という時代と向き合い、この物語の中で、私たち読者に提示されることがどれだけ幸福なことであるかを実感する瞬間が、このコミックを読んでいる時に訪れる。
 刺激は少ないし、派手な物語ではない。単純なお涙頂戴でもない。けれど今、日本の戦時下の歴史をこれから学ぶ人も、日本の外交に腹を立てている人も、日本に対する外国の方針に腹を立て憎んでいる人も、すべての人に読んでもらいたい。あなたに大切な人がいて、あなたの日常の中に幸せを実感する時間があるならば、この物語の持つ輝きにきっと気がつき、それを奪い去ることがいかに残酷で永遠の辛苦しか残さないことかを実感できるはずです。

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2010年1月19日 (火)

『激流』

Riverw ☆☆ ぬけすぎ。
 カーティス・ハンソンは今ではすっかり名のある監督になりましたが、かつてはスリラーを得意とした監督さんでした。そんな彼が飛躍するキッカケになった1本がこれ。なるほどキャストも充実している変形型の密室劇。川下りのシーン自体はすごいと思います。なんですがいくら何でもプロットにあらがありすぎ。ウィリアム・ワイラーの『必死の逃亡者』なんかと比較しちゃうと「んな、あほな」というツッコミが入っちゃいます。ケビン・ベーコンやデビッド・ストラザーンとかは大健闘してますが、メリル・ストリープの役作りはやり過ぎでしょう。というかそこまでやらないとダメということは、この役についてはミスキャストということではないでしょうか。

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2010年1月18日 (月)

『反逆児』

Hangyaku ☆☆☆1/2 ギリシャ悲劇のような重厚さ。
 最近邦画のクラシックばかりをみている気がしますが、でも仕方がない。だって本当に素晴らしい作品が多いのですから。で、これなんですが、これも本当におもしろかった! 時代劇にもかかわらず、まるでギリシャ悲劇をみているような重厚さがあり、映画的興奮と演劇的なおもしろさのいいとこどりのような面白さがあります。
 まず導入部分の合戦シーンが何気なくすごい。これだけでも充分に引っ張れる密度で、この映画はすでに生半可な作品でないことが感じられます。そして中村錦之助が登場してからは映画がぱっと華やぐのですが、そのオーラ自体が悲劇を深める説得力になっています。中村錦之助という役者さんは『関の弥太っぺ』でも私の涙腺を思いっきり刺激しましたが、所作と台詞回しだけでその人物像をしっかり演じられる方です。それでいてオーラがある本物のスターです。脇を固める役者陣も素晴らしく、中でも杉村春子と岩崎加根子の2人はコインの裏表のように女性の怖さをにじませています。プロダクションデザインが素晴らしいのもそうなのですが、特筆すべきは撮影術。わくわくさせる移動撮影や絶妙なスコープの構図(城内を錦之助を閉じ込めるような檻のように撮れる力)は、フィクションをフィクションらしくみせながら物語の虚構を楽しませる東映の底力がガツンと感じられます。この坪井誠さんというカメラマンは存じなかったのですが、フィルモグラフィからすると東映で活動された方のよう。ちょっとチェックしてみたい方です。
 上質の芝居には「いよっ!」と合いの手を入れたくなる感覚があります。こういう感覚は黒澤作品などにはありません。これはそれがありながらなおかつ映画的魅力が兼ね備えられています。そして娯楽性も高い上で、人間ドラマとしての深さも味わうことができます。そう、ひと言で言えば傑作です。

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2010年1月17日 (日)

ポスターをチェンジ! 10/01/17

Dscf0026  昨年後半から飾っていたのが『ウォーリー』。劇場公開時に購入していたにもかかわらず、なかなかサイズがあうフレームが見つからなかったので。ピクサーのポスターはどれもかわいらしい上に、センスがよくていいですね。


で、新年早々にチェンジしたのが『翔んだカップル ラブコールHIROKO版』。Dscf0027 ずーっと前にヤフオクでゲットして、いつか日の目をと思っていました。しかし家族からは不評の嵐(涙)。妻からは鶴見辰吾の短パンが納得いかないとのコメント。そんなこと言われてもなあ(汗)。私まで気になってきちゃいます。次は何にしようかなあ。

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2010年1月16日 (土)

訃報:双葉十三郎

 映画評論家の双葉十三郎さんが12/12、心不全のためなくなりました。享年99歳。
 1910年東京都港区生まれ。幼少時から映画に熱中し、映画館に入り浸りだったそうです。高校時代から映画雑誌への投稿を始め、「キネマ旬報」「スタア」などに映画評が掲載されました。東大経済学部を卒業後、1934年に住友本社在職中から映画評論を発表。1945年に退社後、映画評論家として独立。中でも有名なのは1952年から約半世紀にわたって映画雑誌「スクリーン」で連載された「ぼくの採点表」。日本公開された洋画の大半を☆20点、★5点を組み合わせて100点満点で採点したもので、何よりすごいのは、芸術作品からB級娯楽作までどんな映画もわけへだてなくまず「みる」というところからスタートしているところで、たとえば後年脚光をあびるような作品も、日本で公開されていればほぼ漏れがないというのはスゴイことです。またレイモンド・チャンドラーの「大いなる眠り」などミステリーの翻訳も手がけていました。
 映画評論家としては淀川長治さんとは同世代。亡くなるまでにみた作品は2万本以上。戦前からご覧になっているわけで、現在の映画評論家が物理的にカバーできない知識のあった重鎮でした。淀川さんの自伝にも双葉さんの名前は何度も出てきます。また淀川さんは関西出身で、派手でおしゃれで、ややエキセントリックな一面もあった方だったのに対し、双葉さんは東京出身で野暮が大嫌い、何事も粋でスマートでいらっしゃったイメージがあります。双葉十三郎はペンネームでトムソーヤに由来しているのは有名な話(十三は「トミー」、双葉は「ソーヨー」)。淀川さんの方が世間的知名度はあるかも知れませんが、個人的には評論家のセンスは双葉さんの方が上だったと思っています。特に「ぼくの採点表」は旧作をみるときのガイドとして、これほどニュートラルなものはありません。時代におもねることはなく、新しい発見にも揺るがない正当派もきちんと評価できる方でした。興味のある方は「ぼくの採点表」や「キネ旬ベストテン全史」をご覧になってみてください。
 ご冥福をお祈りします。

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2010年1月15日 (金)

『私は貝になりたい』(1959)

Watakai ☆☆☆ 初監督では荷が重すぎた。
 中居正広主演のリメイク版も話題になりました。こちらはフランキー堺主演の方。でもこちらの公開時の方がきっと時代背景的に切実な思いでご覧になった方は多かったのではないでしょうか。もともとはテレビシリーズだったものを映画化しています。
 戦争責任についての物語をきわめてパーソナルな視点で描こうとしたのは興味深かったです。戦争をすることを決めたのは当時の指導者であって、庶民は巻き込まれたわけですから(そんな指導者を誰が選挙で選んだとか、止められなかったのは世論の流れとか、いろいろと意見はあると思いますが、誰が好きこのんで自分の命をかけて人殺しに出かけたがるのでしょう?)。ただし実際に戦時下ではあったとはいえ人を殺していることもまぎれもない事実であり、最後の無念が痛切ではあるものの釈然としない思いが残るのも偽らざる部分です。間違ってもこれを単なるメロドラマにしてはいけないわけで、そのあたりのところが初監督の橋本忍では重荷だったかもしれません。フランキー堺と新珠三千代はそれぞれ好演ですが、脇を固める藤田進や笠智衆が素晴らしい存在感でドラマをきちっと締めています。またスタッフは東宝で黒澤明とも組んだメンバーがかためており、さすがの仕事ぶりをみせています。
 悪い作品ではないと思いますが、傑作になり損ねたという感が拭えず、もったいないという気持ちの方が強いです。

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2010年1月14日 (木)

『チャーリー・ウィルソンズ・ウォー』

Cww ☆☆ 風刺としてもコメディとしてもぬるい。
 マイク・ニコルズの新作はいかにも彼らしい風刺劇を題材にしています。何しろアフガン侵攻に抵抗していたムジャヒディーンを援助してしまう議員の話であり、しかもそのムジャヒディーンたちが後にタリバンとなってしまうのですから。ところがこれがぴりっとしてこない。なぜなら映画ではその部分はさらりと描いてしまい、トム・ハンクスがした行為自身を自虐的に描けていないからです。この議員の俗物ぶりやその後のことが出てきていません。これはまさに政治家の私的な行動が招いた戦争であって、とばっちりをくうのは何も知らされない私たちです。後先考えない行為が政治の世界では取り返しのつかないことになってしまうわけで、ここは徹底的にやるべきでした。風刺としてもコメディとしてもぬるいとしか言えない完成度です。

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2010年1月13日 (水)

『風が吹くとき』

Whenthe ☆☆1/2 志のある作品づくり。
 その昔にビデオで途中までみたことがありましたが、その時は挫折。ずーっとDVDにもなっていなかったのですが、NHKでのハイビジョンオンエアでようやく。冷戦が過去の遺物となった今、前ほど核の恐怖は感じられなくなってきましたが、それでもこの夫婦の政府に対する盲信ぶりに背筋が凍る思いがします。レイモンド・ブリッグスのあたたかみのあるキャラクターが物語の悲劇性をさらに色濃いものにしており、デビッド・ボウイの主題歌もいい感じです。アニメーションとしての表現の部分では評価が難しいところもありますが、それでもこういう作品をアニメで作ろうとする姿勢は立派です。

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2010年1月12日 (火)

2009年度キネマ旬報ベストテン

2009年度第83回キネマ旬報ベストテンの結果。

【日本映画】
1『ディア・ドクター』
2『ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ~』
3『劔岳 点の記』
4『愛のむきだし』
5『沈まぬ太陽』
6『空気人形』
7『ウルトラミラクルラブストーリー』
8『サマーウォーズ』
9『誰も守ってくれない』
10『風が強く吹いている』

【外国映画】
1『グラン・トリノ』
2『母なる証明』
3『チェンジリング』
4『チェイサー』
5『レスラー』
6『愛を読むひと』
7『アンナと過ごした4日間』
8『戦場でワルツを』
8『スラムドッグ$ミリオネア』
10『イングロリアス・バスターズ』

【個人賞】
監督賞:木村大作『剱岳 点の記』
脚本賞:西川美和『ディア・ドクター』
主演男優賞:笑福亭鶴瓶『ディア・ドクター』
主演女優賞:松たか子ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ~』
助演男優賞:三浦友和『沈まぬ太陽』
助演女優賞:満島ひかり『愛のむきだし』『プライド』『クヒオ大佐』
新人男優賞:西島隆弘『愛のむきだし』
新人女優賞:川上未映子『パンドラの匣』
外国映画監督賞:クリント・イーストウッド『グラン・トリノ』『チェンジリング』

イーストウッド強し! だって2004年度の『ミスティック・リバー』からずーっと監督作は連続1位ですよ。まあ、今回もこの作品は他を圧する風格が感じられましたからねぇ。

過去の結果
2008年
2007年
2006年
2005年

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2010年1月11日 (月)

『007/慰めの報酬』

007qos ☆☆1/2 ボンドがボンドであるためのアイデンティティ。
 ジェームズ・ボンドシリーズ最新作は『カジノロワイヤル』の直後の話。未見の方はこれをまずみておいた方がよさそうです。
 で、お話の方なのですが、まるでジェイソン・ボーンシリーズみたいでした。アクション映画のトレンド通りの作品なのですが、だったらこれをジェームズ・ボンドでやらなくてもよいのではと思ってしまうのは贅沢でしょうか? 監督マーク・フォースターの起用は吉とは出ていません。話自体の盛り上がりにも欠けており、『カジノロワイヤル』の後日談としてはどうでもよい話に思えます。このあたりは前作のボンドガールであったヴェスパーへの復讐でボンドも動いているので、オルガ・キュレリンコ演じるカミーユとの恋愛に火がつかなかったことも要因かもしれません。むしろ復讐に燃えるヒロインというカミーユの物語の方が、サイドストーリーにもかかわらず映画としては盛り上がりそうです。
 ダニエル・クレイグは相変わらずよい感じですが、これでもう少しクールなテイストが出てくるといいと思います。何よりボンドがボンドであるアイデンティティはまだ掴み切れていないのではと思えてなりません。問題は次ですね。ハード路線で歩んだティモシー・ダルトンも2作で降りました。クレイグの真価が問われます。

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2010年1月10日 (日)

『1408号室』

1408 ☆☆1/2 ドッキリ系のスリラーとしては及第点。
お化け屋敷でドッキリ!系のスリラーとしては嫌いじゃありません。サミュエル・ジャクソン扮する支配人との対話から始まり、この部屋の謎とはいったい何かというネタでうまく引っ張っていると思います。ただ謎解きだけに興味がいってしまうときっと立腹する作品でしょうし、細かいところに突っ込みを入れるとキリがなくて納得いかないことが山ほど出てくるでしょう(笑)。これは映画館でキャッキャッいいながらみたら楽しめるタイプだと思います。ただ外の世界とのアクセスをネットに頼る必要はなかったし、最後のオチははっきり言って蛇足。カーペンターの『マウス・オブ・マッドネス』みたいな雰囲気が好きな人にはオススメです。

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2010年1月 9日 (土)

『スターゲイト』

Stargate ☆1/2 へたっぴなハッタリ。
 劇場版はおろかTVシリーズも未見だったこの作品。でもTVシリーズはその長寿ぶりがギネスものだそうで、まずは最初の劇場版をみてみることにしました。しかし、そのあまりの大味ぶりに唖然としてしまいました。『インデペンデス・デイ』や『デイ・アフター・トゥモロー』などは、世評ほど私は嫌いではないのですが、こういうハッタリはエメリッヒはへたっぴですね。それでもこれだけ新作が作れるというのは恵まれています。

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2010年1月 8日 (金)

『乱れる』

Midareru ☆☆☆1/2 メロドラマをみせきる演出の手腕。
 お恥ずかしい話ですが、日本映画の名匠と呼ばれる監督の作品で、まったくみたことがない方が何人かいまして。その内の1人がこの作品の監督である成瀬巳喜男。初見参となりましたが、いやあ、これにはやられました。もう脱帽としか言いようがない素晴らしさ。
ドラマとしてはメロドラマの世界だと思うのですが、高度経済成長下の地方都市で起きた衰退する小売店という背景も効果的で、主人公の未亡人である高峰秀子と加山雄三演じる弟の許されぬ恋が切実に描かれています。決して本心を明かさず、ただ仄めかすだけのダイアローグと、心情がにじみ出てくるような表情と所作が、豊穣たる物語を展開させます。加山雄三が酔った勢いでかけてしまう電話。高峰秀子を追って汽車に乗った加山雄三とのおだやかなひととき。そしてあのラスト。あの高峰秀子のクローズアップ。もうそこには言葉では伝えられない映像ならではの表現が、観客の胸に迫ります。高峰秀子をはじめ、草笛光子、白川由美、三益愛子と出てくる女優陣はそれそれの役柄を好演。特に高峰秀子については絶品としか言いようがありません。また加山雄三はその坊ちゃんキャラを逆手にとった感じで、これはキャスティングの妙でしょう。
 こういうドラマをきちんと魅せてしまう手腕は、まさに「演出」なのでしょう。本当に唸るしかない作品です。

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2010年1月 7日 (木)

BD: Up

Bdup 邦題『カールじいさんの空飛ぶ家』

 ピクサー09年の大ヒット作。 →review というわけで国内盤など待ちきれるわけもなく(だって、米国盤は11月発売だっせ!)その安値で今回は迷わずBDで購入。というのも最近の米国ディズニー盤は「家にあるのはブルーレイだけじゃねぇよ」というユーザーのために、わざわざDVD盤もセットにしたパッケージがあるのだ(それもそんなに実売価格は変わらない)。参考までに向こうのラインナップは・・・

Up (Single Disc Widescreen)  $15
UP (Two-Disc Deluxe Edition + Digital Copy) $20
Up (4 Disc Combo Pack with Digital Copy and DVD) [Blu-ray] $18
Up - Limited Edition Luxo Jr. Collectible Lamp Pack [Blu-ray] $120

 つまりブルーレイ盤は本編、特典の2枚のBDと本編のみのDVDと、さらにデジタルコピーとの4枚組。それが本編のみのDVDとは実売価格で$3しか違わず、さらに本編、特典の2枚組DVDよりは安いのである。こうしてブルーレイユーザーを増やそうとする戦略なわけで、さすがディズニーは商売上手。なお4つめはピクサーのシンボルであるランプのルクソールJr.のフィギュア同梱だが、さすがに高すぎ。というかこれを喜んで買う人はそんなにいるのだろうか?(私はちょっぴり興味は惹かれたが(汗))
 画質音質ともにさすがのレベル。映像特典もてんこもりで国内盤発売まで2000円の投資としては充分。映画館に出かけられないシアターユーザーのパパさん、それからシアター導入を考えていて家族説得の材料を探しているパパさん。これはズバリ、キラーコンテンツとなるかも(笑)。

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2010年1月 6日 (水)

『カールじいさんの空飛ぶ家』日本語吹替版

Up05 ☆☆☆1/2 みた人の心を豊かにできる語りのうまさ。
 最初の出会いはオスカー短編アニメ賞を受賞した『ティン・トイ』。それからずっとピクサー作品をみてきているわけで、考えてみるとピクサーはすでにブランド化しており、それなりの「格」も出てきています。しかしここが素晴らしいのは誰か1人の才能に頼ることなく、さまざまな個性が切磋琢磨していること。だからこうやって新作が期待を裏切ることがないのです。そしてこの新作もまた素晴らしい出来になっていました。
 まずおじいさんが主人公というのがいい。そして風船で家が空を飛ぶというアイディアでこの映画の成功は約束されたようなものです。今まで以上に物語の背景や小道具にさまざまな暗喩を読み取ることができ、ひとつひとつのシーンが実に豊かです。デフォルメすべきところは思い切って簡略化し、けれど現実感はきちっと表現するというピクサーのスタイルはここに来て成熟の域まで来たと思います。もはや人間をフルCGで描いても、表面が毛で覆われている生き物を描いても、何の違和感もありません。それは『ウォーリー』でも指摘しましたが、撮影技法のシミュレーションが他のスタジオと比較しても群を抜いたレベルにあり、それによって場面構成されていることで、私たちが現実として受け入れられのだということでしょう。
 オープニングの思い出のシークエンスは一編の詩のようなシンプルで美しい表現にぐっと来ます。そしてこれが全部後の物語をかちっと支えているのです。主人公のカールは日々の日常を生きることの大切さ、そして誰かを支えることの大切さをもう一度思い起こします。それが実に自然に観客である我々もはっとさせられるのです。ピクサー作品のストーリーテリングのうまさは、ここにあります。つまりただ涙腺のツボをこれみよがしにつくのではなく、緩急自在に物語を紡ぎながら、ある場面でふっとペースを緩めることで観客の想像力を刺激する。『トイ・ストーリー2』のジェシーのフラッシュバック、『レミーのおいしいレストラン』で評論家を幼少時代に引き戻す料理の味。これはもう唸るしかありません。脇を固めるキャラクターも今回は特筆物で、動物たちを必要以上に擬人化しない面白さがあります。中でも犬の首輪には大笑いしました。
 この作品はピクサー初の3D想定で製作された作品ですが、この使い方にも感心しました。ことさら飛び出るような使い方はしていないのですが、室内シーンと屋外シーンの構図のとり方をはっきりと変えたことで、外の景色の時に我々もそこを訪れたときに感じるようなスケールが出ていました。
 最後に毎度おなじみの短編ですが、今回の『晴れ ときどき くもり』はここ数年のピクサー短編では文句なしの素晴らしさ。物語、キャラクター、動き・・・。文句のつけようがありません。わずか6分の短編にじーんとしてしまいました。
 というわけでご家族でおでかけください。そう、ぜひおじいちゃんとおばあちゃんも一緒に。みる人の立場で感じることがあり(しかも豊かなものを)、それを映画が終わった後で語り合える幸せを感じられます。
(WMC港北ニュータウン6にて)

 もうひとつ蛇足で。この作品はピクサー作品としては国内初の3D上映ですが、大人の客層も意識したマーケティングと言うことで、必要以上に3Dをプッシュしなかったと言うことです。また3Dにも字幕と吹替とが用意されています。吹替版もよい出来映え(いわゆる知名度売りのキャスティングではありません)でしたので、それはどちらでもよいのですが、私としては3Dをおすすめします。後日2Dを家でみていますが、あの映像のスケールは3Dならではだと思います。(びょーんと飛び出しは期待してはいけません。)

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2010年1月 5日 (火)

『攻撃』

Attack ☆☆☆ ジャック・パランスの存在感。
 ロバート・アルドリッチの監督作をWOWOWで特集していましたが、これはその1本。力作でした。無能な上官との軋轢というとキューブリックの『突撃』が思い起こされますが、あちらが軍隊という組織の非人間性を鋭く指摘したのに対し、ここではあくまでも戦場化の人間ドラマとして、兵士たちを見つめています。何よりジャック・パランスが素晴らしく、その狂気を秘めた力強さには圧倒されます。さらに小心者の上官を演じるエディ・アルバートも見事です。戦争映画の佳作としてオススメの作品です。

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2010年1月 4日 (月)

『戦場でワルツを』

Waltzwb ☆☆ 劇映画としては胡散臭い。
 まいりました。こういう作品とは想像していませんでした。ひとことで言えばドキュメンタリーをアニメーションにしたということになるのでしょう。でもあまりにも突飛すぎる構成と、その個性的な画づくりに(もうひとつ付け加えるならば中東戦争について歴史的事実をよく知らなかったこと)お手上げでした。アニメーションでの再構築というのはユニークな手法だと思いますが、これはドキュメンタリーというカテゴリには入らないと思いますし、劇映画としては胡散臭さがぬぐえません。いつかもう一度みてみたいと思いますが、今はそんな気持ちはおきません。
 あとシネスイッチ銀座2だったのですが、暖房は効きすぎな上に、相変わらず非常口のライトは消えず、映写もボケ気味と最悪のコンディションでした。ミニシアターってこういうので良かったのだろうか、ちょっと考えて欲しいところです。
(シネスイッチ銀座2にて)

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2010年1月 3日 (日)

『沈まぬ太陽』

Sizumanu ☆☆1/2 作られた価値、軽い描写。
 かつて今井正、熊井啓、山本薩夫などが残した数々の社会派と呼ばれる作品群に、この作品はつながるはずです。きっと完成までの道のりにはいろいろなことがあったと思いますが、それを乗り越えてこの映画を作ったという点は高く評価します。また『クライマーズ・ハイ』が避けた日航機事故の場面もきちんと描写したことは立派だと思います。
 しかし手放しでほめられる出来にはなっていません。とにかくどの場面も描写が軽く、何かの総集編を眺めているような気がします。このあたりは演出家の技量とシナリオの作劇に問題があるようです。その証拠に渡辺謙は、あれだけ『ラスト・サムライ』や『硫黄島からの手紙』では光っていたのに、なぜ邦画になると輝きを失ってしまうのでしょう? もし山本薩夫あたりが撮っていたら、もっとこってりしたドラマになっていたと思います。
 もう一点は山崎豊子の原作について。山崎豊子の取材力には感心しますが、今回のドラマが妙に腰が引けた部分があるのは、そもそも原作から引きずっているように感じました。誰が見てもこの人がモデルだとわかる設定の上に、事故の場面では事実をベースにしている(墜落前の交信は記録のままですし、遺族のエピソードも事実がもとになっている)というのはクリエイターとしてどうなのでしょう? しかも山崎豊子の小説は物語の展開上、白黒はっきりとした人物がたくさん出てきており、この映画をみたら日本航空はなんてひどい会社だと考える人は後を絶たないでしょう。この部分は映画になっても結局クリアされず、そのまま見切り発車になってしまったように思います。
 それでも時に印象的な場面がたくさん出てきます。渡辺謙の存在感は見事ですし、まわりをかためる役者陣もさすがです。ただしアンサンブルとしては調和が取れていません。それからパナビジョンジェネシスを使用したようですが、画調がうまくコントロールできていないように思えてなりませんでした。ひどかったのは視覚効果で、あのジャンボジェット機の離陸は失笑物でした。
 傑作にはなっていませんが力作です。そしてこの作品の後には、観客は大いに語りあうべきです。それが健全な議論を呼ぶのであれば、この作品はたとえ映画としての完成度が低くても、作られた価値があったのだと思います。
(WMC港北ニュータウン10にて)

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2010年1月 2日 (土)

ロジャー・エバート氏の2009年ベスト・ムービー

 シカゴ・サンタイムズの映画評論家ロジャー・エバート氏の2009年のベスト・ムービーが発表。今年はメインストリームとインディペンデントに分け、それぞれ10本が選出された。(その線引きをどこでしているかは、よくわからん)
■メインストリーム作品
 『バッド・ルーテナント』
 "Crazy Heart"
 『17歳の肖像』
 『ハート・ロッカー』
 『イングロリアス・バスターズ』
 『ノウイング』
 『プレシャス』
 "A Serious Man"
 『マイレージ、マイライフ』
 『The White Ribbon』

■インディペンデント作品
 『おくりびと』
 "Disgrace"
 "Everlasting Moments"
 『グッバイ ソロ』
 "Julia"
 "Silent Light"
 『闇の列車、光の旅』
 "Skin"
 "Trucker"
 "You, the Living"

ロジャー・エバートの過去の選出。
2008年度

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2010年1月 1日 (金)

2010謹賀新年&今年の購入計画?

 明けましておめでとうございます。いやあ、2010年です。2001年でも感慨深かったですが、2010年ですよ! HAL9000がチャンドラ博士に説得された年ですよ(わかる人はわかってください)。でもディスカバリー号のような宇宙船はおろか、HAL9000のような人工知能もまだまだ先になりそうです。
 昨年は映画館であまりみていませんでした(ベスト選出はおろか、映画好きと語るのもおこがましい本数かも知れません)。みたいのも少なかったのですが、出かけるが億劫になったこともかなりあり、反省しています。でももう少し歯ごたえのある作品がみたいものです。さて毎年恒例(?)今年のシアターまわりの目標!

<ほしいもの>
・次世代DVD対応のアンプ
・フロントスピーカー

<気になること>
・スカパー!HD
・スクリーン
・家のLAN環境

 この2つは懸案事項で昨年度よりそのまま。でもめでたくプレイヤーは買ったし、ランプ交換はしたし。去年はシアターでは本数も楽しめたのでうれしいかぎり。ただ次世代アンプも正直ものすごく欲しいではありません。むしろ今、気になっているのはスクリーン。ややたわんできた気がします。それとHDソースではスカパー!HDは気になっています。パナのレコーダーが対応とかになっちゃったら、かなり迷うかも知れません(しかもまたボンドさんのブログのネタがそんな系ですし(笑))。最後に家のLAN環境。2回でDLNAの作品を楽しむために知恵を絞っていますが、なかなか希望どおりになりません。

 ではみなさま今年もよろしくお願いします。

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