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2009年11月26日 (木)

『スカイ・クロラ』

Skyclw ☆☆ 迷い込んだ袋小路。
 押井守はそれほど嫌いじゃない。けれど正直最近の作品は「なんだかなあ」と思っている。そんな私ですが、この作品はやっぱりだめでした。『うる星やつら2・ビューティフルドリーマー』の原作の世界観をも飲み込んだ衝撃的な設定、『劇場版パトレイバー2』の徹底した描き込みでもたらせれる実写とアニメのボーダレスな感覚、『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』のこの先にある未来で待ち受ける哲学的な問い。いずれもとても魅力的でした。しかしどれも「世界観」が持つ魅力が作品としての魅力と同義になってしまって、そこに魅力を感じられないときわめて内に閉じた、『アバロン』や『イノセンス』のようなひとりよがりの物語にしかならないことも多いのです。ひと言で言ってしまえば先鋭的な世界観を感じなかったのです。
 もちろんあの世界が現実社会で使い捨てのようにされている若者のメタファーになっているのはわかります。また生を現実として実感できない部分が表出されていることもわかります。それでも「同じ道でもみえる景色は違う」ことを伝えたいというのであれば、この物語でなくてもよかったと思います。海外のメディアがキルドレという空想世界の戦争という設定に噛みついたという話もありましたが、私もこのあたりには強い違和感を感じたのです。それは生が一度きりゆえの価値もあるからです。キャラクターやメカのデザインもマッチしているとは思えず、さらに声優の使い方も効果的だったとは思えませんでした。
 2008年夏に発表された宮崎駿と押井守という2人の巨匠の新作は、これからの未来がみえない作品でした。迷い込んだ袋小路は他人から理解されない自分の世界、このひと言につきるのかもしれません。

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