『太陽の子 てだのふあ』
☆☆1/2 紋切り型なのが惜しいが志はある。
灰谷健次郎の傑作児童文学を浦山桐郎が映像化した本作。沖縄の歴史をきちんと知る必要性がどれだけ現在感じられているかは別として、きちんと沖縄の過去を対峙しようとしている姿勢は見事です。ただこれがどこか表層的で他人事のような感じがしてしまうのはなぜでしょう。きっとそれはあまりにも沖縄の過去を紋切り型でとらえすぎだからです。もっと楽しいことや幸せな時間があるからこそ、そこにはどうしても許せない忘れられない悲しみが横たわっているのであり、そのあたりのバランスがとらえられていません。舞台となる沖縄料理店でのやりとりは思わず吹き出してしまうようなところがあり、このあたりが浦山桐郎の限界なのかもしれません。これが森崎東や前田陽一あたりがやるとまた違う気がします。でもこの頃の邦画はちゃんとシリアスな題材も志のある人が取り組んでいたことを痛感。少なくともお涙頂戴ではないです。河原崎長一郎のエピソードに私たちは戦争が庶民に残した傷跡の深さを忘れてはいけないことを突きつけるのです。
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