『アフター・スクール』
☆☆ 騙しのカタルシスの難しさ。
内田けんじの前作『運命じゃない人』は未見、この作品もはりきってみたわけではないのですが、予想していたものよりは楽しめました。ただみんなでほめそやすほどの作品だとはとらえていません。
いわゆるミスリード系の「騙された!」という快感を観客にカタルシスとして与えることはとても難しく、成功した作品は限られています。こkでポイントとなるのは観客をフェアに騙しているか、そして再見に耐えられる面白さがあるか、何より映画として魅力があるかにあります。このオチから精緻に逆算された印象があり、少なくともアンフェアだという印象はありません。ただし「騙し」のカタルシスは希薄です。なぜかという騙した相手に問題があるのです。『スティング』はギャングのボス、それほど私は評価はしていない『ユージュアル・サスペクツ』は警察と、それぞれ騙す相手としては強敵で、騙す側はあくまで体制側ではないといえる立場。ところが今回騙す側に警察がついています。しかも騙す相手には佐々木蔵之介演じる落ちぶれた探偵もいる。正直後味がよいとはいえず、カタルシスは少なかった。これは結局キャラクターの底が浅いことにつきるし、演じての力量不足から来ているとも言えます。またインディーズ系の邦画で言えることですが、相変わらず画作りが貧しい。スキントーンはバラバラ、おもわず光量不足なのか?とおもうよう画も散見されます。何よりどっちつかずでバラバラなタッチは、物語を語るのにこの画でいいのかという思いが消えないのです。
この作品がプログラムピクチュアとして映画界を支えている力は確かです。ただシナリオの力というのは「騙す」ことではないと思います。ドラマの深みがうまれることを期待しています。
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