『ブラック・スネーク・モーン』
☆1/2 人ごとになってはいけない。
『ハッスル&フロウ』のクレイグ・ブリュワーの新作ということで期待していたのですが、土着性が色濃く出ている作品世界で、私の中で租借しきれなかったように思いました。ただ原因はそこだけにあるようにも思えません。考えてみるに男と女の物語に普遍性を獲得できなかったことも大きかったと思います。
前作『ハッスル&フロウ』がダメ人間を描きつつも誇りたく生きるとは何かを鮮やかに描き出したのに対し、本作は登場人物それぞれが抱えるブラック・スネーク・モーンのようなトラウマ、しがらみがもうひとつ浮かび上がらず、人ごとのようになっています。人は他人の弱さにつけこむことも救いの手をさしのべることもできる中で、結局自分の中の弱さを認められないという現実を描こうとしたことはわかるのですが、メンフィスという土地柄とブルースが持つ音楽性という強力な援軍がありつつも、それがいかされなかったのはキャストに問題があったのではないでしょうか。クリスティーナ・リッチは健闘しているのですが痛々しさだけが先に立ち、その中に見え隠れすべき神々しさがなく、ジャスティン・ティンバーレイクは最悪のひとこと。サミュエル・ジャクソンにいたっては、もはやダメ人間を演じることに無理があるのかもしれません。このトライアングルが強固になっていれば見応えのある作品になったかもしれません。
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