『レミーのおいしいレストラン』
☆☆☆ 人間をきちんと描いたアニメの小品。
そういや書くのをすっかり忘れていました。
かつてCGには苦手な分野がありました。それは一本一本のふわふわした毛で覆われた動物だったり、水の動きであったり。中でも最も苦手だったのが人間。実際あのピクサーですら一筋縄ではいかなかったのです。少なくとも『トイ・ストーリー』のシドはやはりマネキンぽさが抜けず、『Mr.インクレディブル』はあくまでもコミックベースだから違和感がなかったのです。ところがこの作品で人間を描くという壁をすんなりと越えてしまいました。この作品はその記念すべき1本として記憶される作品です。
話の内容はわりと突っ込みどころはあります。そもそもネズミと料理という組み合わせに驚かれるかもしれません。さらにネズミや主人公周辺のキャラ造形はいかにもピクサーな感じで、物語も容易に想像がついてしまうのは今後の不安のタネです。それでもこの作品に魅力があるのは料理のあたたかさが伝わる豊かな表現力と、アニメーションならではのスラップスティックな躍動感にみちているからです。何より人間のキャラクターを巧みにデフォルメしたことで愛らしさとリアリティの両方を獲得したことには感嘆するしかありません。そこはブラッド・バード。前作『Mr.インクレディブル』よりもこちらのほうが本領発揮といったところです。
子どもだけに独占させるにはもったいない。むしろ大人の方がきちんと味わえる佳作です。
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