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2009年5月 1日 (金)

『あるスキャンダルの覚え書き』

Noteons ☆☆☆1/2 主演2人の演技を存分に楽しもう。
 私が映画をみる時の楽しみのひとつは俳優の芝居にあります。大向こうから声がかかりそうなものから、ごく自然なものまで、確かな演技力をみせてくれる俳優さんには敬意を表します。そういう意味でもこの作品はケイト・ブランシェットとジュディ・デンチという当代きっての女優2人が、素晴らしい演技で楽しませてくれます。いや、ひょっとしたらこの作品、この2人でなかったらまったく味も素っ気もない作品になったかもしれません。
 特にケイト・ブランシェットはお見事。開放的で人を惹きつけつつもどこかに隙があることを隠せない女性シーバを演じます。しかもそれが余白を想像したくなる演技と呼べばよいのでしょうか。デンチ演じる女性バーバラのモノローグを聞いていると、シーバという女性のパーソナリティをもっともっと知りたくなる。ブランシェットの演技はその空白を観客の想像力を刺激するに充分な説得力を持っています。他方のデンチも孤独な老女の愛情への乾きを策略というオブラートに包んで巧みに演じます。このバーバラという女性が策士策におぼれる姿を、単純なサスペンスではなく人間の持つ闇の怖さと、どこか滑稽ですらある無常観を出せるのはデンチならではでしょう。
 演出としては記号的で映画としての存在意義には疑問を投げかけたいところもあるのですが、それでもこの作品の質の高さは疑いようもありません。何よりこの2人の演技を存分に楽しめることに映画ファンとして喜びを感じるのです。

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