『ミスト』
☆☆☆1/2 絶望感にうちのめされて
。
ポスト9.11を象徴するようなこの絶望感は見事としかいいようがないフランク・ダラボンの新作。ただただ圧倒されました。
お話の展開はほとんど過去のB級ホラーに近いものがあり、ひとつ間違えると失笑物です。しかしダラボンはショッピングストアという限定された空間の中に人間同士の葛藤というもうひとつの閉塞的な要素を持ち込んだことで、作品に格のような重さを与えることに成功しました。またそこではマーシャ・ゲイ・ハーデン(見事な演技!)をめぐる観客を巻き込んだ仕掛けまであり、息をつく暇さえありません。
さあ問題はラストでしょう。(以下ネタバレ。ドラッグ&反転でお読みください。)あのラスト。悪いとは思わないのですが、正直蛇足かと思いました。その前に車を走行中に超巨大な異生物と遭遇するところがあります。あそこで終わっても充分だった。充分すぎるほどの絶望感があったはずです。この映画で描かれるような主人公の決断を観客に想起させるだけの力もありました。ところがああやって直接みせられた上に、戦車が登場となってしまうと「うーん」と思ってしまったのは事実です。直接みせられるよりも考えて想像する方がもっと怖く、本当に救いようのない状況というのは自分たちではどうしようもない現実をつきつけられることだとこの作品が説得力のある描写でここまで成功しているだけに残念に思います。
いずれにせよ見応え充分な本作。キング原作のゲテモノホラーというだけで敬遠している人、そして圧倒的に怖い思いをしたい人、そして絶望という状況を追体験したい人、何より手に汗握る映画をみたい人にオススメします。
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