『ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト』
☆☆☆ 伝統芸能の域。
スコッセシとストーンズ。わくわくする才能の組み合わせでうまれたこの作品は、いろいろな点で複雑な心境を抱かせました。
ストーンズはもはや「我が道をいく」ですね。ミックはミック、キースはキース。新宿コマ劇場のサブちゃんの世界。とっくに興行バンドになっていますから。もはやストーンズという名の伝統芸能のような世界をみせています。ドキュメンタリーの側面としてはとてもバランスが悪いです。ハッとさせるような瞬間と投げやりな瞬間がごちゃ混ぜになっていて、みている観客をたきつけるようなことがありません。それはストーンズの記録という点からも同様で、ハル・アシュビーの『ザ・ローリング・ストーンズ』のようにスタイリッシュな映像で彼らのかっこよさだけを切り取ることはしません。だからといって彼らの老醜までふみこむようなことはなく、これは時には痛快ですが、時には不気味でもありました。ではスコセッシの作品としてみるとどうか。この作品が『ラスト・ワルツ』を上回ったと評価する人は少ないでしょう。スコセッシのすごさは時代の空気をコラージュしてうみだせる点にあり、そういう意味ではこの映画は落第点です。しかしながらそうそうたる撮影監督のサポートをあおいでまとめたロバート・リチャードソンの手腕はたたえておきましょう。
結論としてストーンズはスコセッシに置いてきぼりをくらわせました。オープニングのセットリストに関するドタバタが象徴しています。そして何より映像作家が年相応で得ていく「枯れ」や「開き直り」と未だに直視できないスコセッシにストーンズは「?」だったのかもしれません。
蛇足ですがラッキーなことに私はTHX認証の大きなスクリーンでみられました。しかしこの作品、全米ではアイマックスでも上映されています。その点は少し悔しく思います。
(TOHOシネマズ川崎5にて)
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