『シルク』
☆ 勝手にしてくれ。
新年最初にみたのはこの作品だったのですが、いきなり大ハズレでした。ひどいです。
とにかく話に説得力がまったくない。この物語でもっとも残酷なのは時間であり、そして隔てられた距離にあるのです。物語の舞台となる時代は、それこそ日本までの旅は命をかけた長旅になるはずがまず全然重みが感じられません。その上、そこでマイケル・ピット演じる主人公がが感じる寂しさとか切なさが希薄なため、なぜ彼が少女(そもそも芦名星が少女というのが大間違い)に惹かれたのかもさっぱりわからない。さらにキーラ・ナイトレイ演じる妻との関係の描き方がまったく的を射ないので、最後で手紙の秘密が明かされるところもまったく効いてきません。主人公の心情がここまでみえてこないのも珍しいのですが、その上、観客から勝手にしてくれと思われる描き方には呆れるほかありません。画だけは無駄に美しく、坂本龍一の音楽も素晴らしい出来だけに、余計にいらいらが募ります。
マイケル・ピットとキーラ・ナイトレイは彼らのキャリアでも最大の汚点となるような演技、芦名星にいたっては大根という表現以前の問題です。実力派役所広司には威厳が、アルフレッド・モリーナには懐の深さが欠けた演技です。唯一の救いは中谷美紀で彼女だけはこの映画の中でも光っていました。
日本の描写がそれほど悪くないだけに、もっと堂々たる大作にすればよかったのかもしれませんが、それですべて解決できるとは思えないほどのひどいできばえです。
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