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2008年12月13日 (土)

『ウォーリー』日本語吹替版

Walle ☆☆☆1/2 まるでチャップリンの作品群のよう。
 ピクサー待望の新作は、まるでチャップリンの作品群のように、チャーミングでいながら鋭い風刺をあわせもつ作品となっていました。
 何よりもビジュアルの勝利です。デザイン面ではウォーリーの姿。本来無機質であるはずのロボットが何と愛らしいことか。形状もそうですが、その行動がほほえましい。そのスラップスティックなドタバタぶりには大笑いさせられます。しかもそれがイヤミじゃないところがいいのです。指輪を見つけても中身よりケースを大事に持ち帰ろうとする。仕事を終えるとキャタピラをかける。庶民的であるがゆえに、そこにずっとひとりぼっちだったことに胸迫る寂しさを感じます。そしてゴミだらけの地球の姿。このあたりは凄いと唸るしかありません。もっとも驚いたのはその撮影技法。あまりにもライブアクション的で背景の質感とかがいわゆる他のフルCG作品とは違う。後で読んだ「映画秘宝」によると、ビジュアルコンサルタントとして、ロジャー・ディーキンスが招かれて、現実の機材による撮影を徹底的にシミュレーションしたとのこと。なるほどと納得しました。
 それでいて物語はけっして安易にエモーショナルな方向に行きません(本当に日本の売り方は何とかしてほしい。この作品のもたらす感動は、お涙頂戴とは次元が違う)という。地球を去ってからはこれがびっくりのデストピアSFの世界。故障ロボットたちの描写や、船内で過ごす人々の様子、極めつけの『ツァラトゥストラはかく語りき』の使い方まで、そのディテールの細かさはさすがのレベルで、子ども騙しにならない物語展開をしていきます。あのラスト、イブがウォーリーを修理する件は素晴らしかった。私たちが無機質なロボットの姿になぜ心を揺さぶられるかという芸術哲学的な問いかけとともに、この作品をそんじょそこらのアニメとは違う品格を持ったといってよいでしょう。
 ここ数作で殻を破ろうともがいていたピクサーが間違いなく新しい扉をあけたといえます。そのウォーリーの愛らしさとともにずっと忘れることのできない佳品です。
 なお余談ですが、可能であればDLP上映館でぜひ。やはりこの世界観にはDLPの質感が似合っています。
(新宿バルト9 シアター9にて)

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