『ラストキング・オブ・スコットランド』
☆☆1/2 ひとごとにしない表現とは?
フォレスト・ウィティカーがオスカーを獲得した本作。私も題名をきいてなんでウガンダがスコットランド?なんてとんちんかんなことを考えていたのですが、製作者の意図を端的に表現したタイトルでした。
世間一般の評価では暴君となっているアミン大統領を少年のような純粋さと猜疑心の固まりのような人物としてとらえ、そこに白人の無責任な思惑をスコットランド人医師ニコラスに反映させて絡ませたのはおもしろい試みです。つまり現地の人の気持ちなど知ったことではない。アミンの行動に対してニコラスの言動は観客の同情をひくことはありません。つまり両方ともどっちもどっちなのだということです。しかし映画のできばえとして微妙な評価になってしまうのは、どうもひとつひとつの表現が静物画的で、ドラマとしての説得力に欠けたこと。本来介在するはずの現地の人々を体現するキャラクターが存在しなかったために、住んでいる人々まで自業自得的な突き放し方を表現から感じてしまうのです。ここは同じ声なき人々の地獄を描いた『ホテル・ルワンダ』や、一部だけ出てくる『ロード・オブ・ウォー』の方が説得力を持っていました。悪い作品ではありませんが、できばえは今ひとつといったところです。
ウィティカーは悪くありませんが、これならば『バード』の彼の方が素晴らしかったです。他方のジェームズ・マカヴォイは好演。この人、ひょっとしたら化けそうな感じがします。
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