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2008年9月26日 (金)

『我等の生涯の最良の年』

☆☆☆1/2 極上のホームドラマ。
 ウィリアム・ワイラーのオスカー受賞作。いや、みるつもりはなかったのですが、幕開けからついつい見入って最後まで。うん、やっぱりこの時代の作品は違いますね。クラシックという表現がふさわしく、どきつい表現はなくとも、きちんとドラマの本質と向き合おうとする気概があります。だって第2次大戦後わずか1年です。それでいてこの内容。ステレオタイプな描き方が散見されたり、表層的な描き方になっているという指摘も間違ってはいないと思いますが、むしろ傷痍軍人までひっぱりだしつつも、扇情的な描写をしなかったことと、この時代には異色の大長編(170分)でありながらありがちなメロドラマにしなかったことを称えるべきでしょう。同時期のヨーロッパ作品は自国が戦場になっているわけですから、戦争の影がかなり色濃く、それはそれで鮮烈な作品が数多く生まれています。しかしこの作品はさまざまな社会的地位の人に影を落とした戦争の影を、ホームドラマの体裁をとりつつも足かせにはせずに、それゆえに地に足のついた物語にしています。回想シーンで戦場の場面などはまったく挿入されないにも関わらず、心の傷を感じさせるのはワイラーの演出力の勝利でしょう。また名手グレッグ・トーランドのカメラが紡ぐ語り口の素晴らしさ。このモノクロで切り取ったスタンダードフレームの美しさと簡潔さにはほれぼれします。演技陣ではフレデリック・マーチの素晴らしさに唸りました。
 最近映画らしい映画をみていないというあなたにはお勧めの、見事な作品です。

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