町山智浩氏と田山力哉氏
町山智浩さんは数少ない私が信頼している映画評論家です。「映画秘宝」という存在を作った一員であるだけでも素晴らしいのですが、私が信頼している理由として
・(少なくともほめるべき作品を間違わない)審美眼がある。
・(常識的に知るべき)古い作品を知っている。
・(当たり前だけどやる人は少ない)自分に必要な取材をしている。
・(これも当たり前だが)まともな文章が書ける。
その町山さんがエキサイトしています。
この文章、なんか似たことを誰か言っていたなあと思い出したのが、同じく映画評論家の田山力哉さん。彼の著作『さよなら映画、また近いうちに』の中で彼は映画界における現状を嘆いていますが、その中の「映画の害虫は消え去れ」でおすぎ氏に対して強烈な批判を書いています(私も評論家と名乗る人間が広告に出ることは絶対にやってはいけない禁じ手だと思います)。また「映画評論家は信じられていない」でも評論家のあり方に一石を投じています。(余談ですがこの本には町山氏の妹、町山広美氏が出てくるくだりがあり、そう考えると不思議な縁を感じます)。
町山さんと田山さんはスタンスはかなり違いますが、この2人に共通することが2つ。まずは文章力。町山氏が本でもまとめている「映画秘宝」連載の「イエスタディ・ワンスモア」での検証力と、田山氏が残した評伝小説の構成力は、取材と分析でうみだされる論文的説得力があります。
もうひとつは大好きな作品をきちんと評論家として応援する姿勢。もし町山さんがとりあげなかったら『ホテル・ルワンダ』を知らなかったでしょうし、田山氏がとりあげなかったら特攻隊で命を落とした唯一のプロ野球選手、石丸進一を描いた『人間の翼』を知らずにいたでしょう。
彼の酒に関するエピソードやその生き方には賛否両論あると思いますが、もし彼の評伝小説を読んだことがない方はぜひ読んでみてください。市川雷蔵、田宮二郎、そして渥美清。彼らが持つ影が何だったかをきちっととらえた作品ばかりです。
そんな田山さん著作『市川雷蔵かげろうの死』の素晴らしさに私は感激して、ファンレターを書いたことがあります。その頃私は元住吉に住んでいましたが、氏が日吉に在住されていることもあって、どこか親近感を覚えたというのもありました。すると後日丁寧なお返事(下の写真)をいただきました。すごくうれしかったことを覚えています。そうかあ、もう田山さんが亡くなって11年にもなるんですねぇ。
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